敵襲


=真実の滝=

森の方から三人の男が歩いてきた。ガイとアオバとモトイだ。
ガイの顔色はだいぶ良くなっていて、ここに来る間にモトイから真実の滝の話を聞いたのだろう。興味津々の表情でサキの元までやってきた。

「むむ、ナルトに続いてサキももう一人の自分に打ち勝ったのか?」

私が見たのは闇の部分というより前世の自分だったんだけどと思いながら一先ず頷き、「ガイさんもやってみます?」と滝を薦めた。
けれどガイは普段の熱血っぷりを見せずに、滝の前で眉を顰めた。己に打ち勝つのだって張り切る印象を持っていたのだが。

「もしかして本当の自分を見るのが怖いんですか」

隣にいたアオバが揶揄うと、ガイは引き攣った笑みを浮かべて浮島へ飛んだ。明らかに強がっているのが分かって心配の気持ちが芽生える。

「あのー、無理にやらなくても大丈夫ですよ」
「何を言うか!オレに怖いものなどない!」

(左様ですか……ガイさんの滝行が終わったら、ナルトのところ行こうかな)

そうしてガイの様子を見守る中、滝の奥から嫌な気配が近づいてくるのを感知した。
現在滝の中にいるのはナルトとビーとヤマト、それから九尾に八尾のはず。そのどれでもない気配に全神経を向けた。


ザバッッ

勢いよく滝から出てきたものに見覚えがあった。

青白い肌に鮫のようなあの顔つき――それに体に纏わりついているのは忌々しい愛刀の鮫肌。

(暁の魚人男!?鉄の国で死んでなかったの?)

「青春を忘れたオレ!お前の根性を叩き直してやる!」

真実の滝から現れたものをもう一人の自分だと思い込んでいるガイは、魚人男にそのまま得意の体術を食らわせた。

「ガイさん!それは真実のアナタじゃないです!」

勘違いしているガイに声をかけたときには遅く――

「え?」

ドゴンと音を立てて、魚人男は崖にめり込んだ。
ナイスと言えばナイスなんですがね……もうなんと言えばいいか分からない。

それと同時に滝の中からビーが出てきた。
魚人男を追ってきたに違いない。

「ビーさん!!状況説明お願いします。何で魚人男がいるんですか!?」
「あー……奴は鮫肌に擬態してコチラを詮索。ナルトの尾獣モードで正体発覚。スパイに逃げられればオレ達失錯。イエー」
「こんな時までいちいち韻踏もうとしなくて良いですから!」

鉄の国での戦い後、戦利品としてビーが持ち歩いていた鮫肌の中に鬼鮫は身を隠していたようだ。
"尾獣モード"という気になるワードが出たけれど、今は鬼鮫を捕らえることが先決だ。コイツに逃げられると、敵に尾獣の位置情報がバレてしまう。
それだけは避けなくてはいけなかった。


***

***


ガイの活躍で何とか鬼鮫を捕らえた。
続けて鬼鮫を尋問しようとすると、鬼鮫はあろう事かサメを口寄せし己を食わせた。一瞬の出来事に何も手を打てず暁から情報を吸い出すことは叶わなかった。

だが鬼鮫がマダラに渡そうとしていた巻物は最低限回収できた。

「暁に情報が漏れずにすみましたね」
「その巻物の中身を一応確認しておこう。奴らの知りたかったものが分かれば対応しやすい」
「そうだな」

ガイが巻物の紐を解くと、紙面から水が飛び出して、辺りを囲んでいた全員に重い水が纏わりついた。
ガイの手から離れた巻物は、同じく巻物から飛び出したサメに咥えられ海の方へ進んでいく。

(しまった!)

皆が水牢の術から出た時にはもうサメは海に入ってしまった。

これは暁に居場所がバレたとみて間違いない。
そんな話をしているモトイとアオバの話に耳を傾けると、実はこの島は雲隠れがはるか昔から飼っている大亀の甲羅の上だと知らされた。

「それにナルトにはこの島の生態調査の極秘任務と言ってある。島から移動させると怪しまれるだろ」
「それは、そうですね……」


(生態調査か……ナルトをこの島から出さないように綱手様が任せた任務だけど、それが終わったらナルトに真実を告げてみるか?)

(でも私がリークしたら約束反故にしてるし、ナルトが自力で気づいてくれないとダメなんだよな……よし!)

サキは妙案を思いつき、生態調査を早く終わらせようと言って、ナルトとビー達と森の中に戻っていった。


***

***


森の中にある建屋(大亀の甲羅の中)に動物を案内していく。表向きは生態調査、本当は暁に狙われることを想定して安全なところへ避難させているのだ。

この島の動物はビーの言うことを聞いてくれるので誘導自体はスムーズに行っていたのだが、ナルトと半分ずつでやっているリスト作成が滞っていた。
珍獣が多く、なかなかナルトとサキの言うことを聞かない。ナルトが真剣にやっている手前、例え偽任務でもサボるわけにはいかない。

「……縮こまってないで伸びてくれないかな。何メートルか記載しないといけないんだけど」

大型の蛇に話しかけても丸まって伸びてくれない。
"体長"の項目でバインダーの記入を止めた。
ナルトも"男"と背中に書かれたアルマジロの性別判定ができなくて困っていた。

「聞いてみてよオッサン……ここのボスなんだろ?」
「……どうなんだ?」

ビーがアルマジロに効くとニョキっと頭を出してウーウーと鳴く。

「プライベートはプライバシー」
「あーそうですか!!」
「オスとメス、性別がひっくり返るようなことがあってもYO、天地がひっくり返るわけでもねーだろ!バカヤロー!コノヤロー!」

ビーがいたとて手のかかる任務だ。ため息をついて"再調査"と紙の隅に走り書きして蛇を飛ばそうとした時だった。

遠くで何か巨大な生物を感知した。
同伴のモトイも気づいたようでヤマトに目配せをする。次の瞬間、突然地面がグラグラと揺れて、建屋の天井から小石や砂が落ちてきた。この揺れはかなり大きい。立っているのがやっとなくらい。

「地震だってばよォォ!!」

そして一旦治ったかと思えば、一転
地面が大きく傾き、体が浮いて視界が反転した。

「「うわあああああ!!」」

先程まで床だった場所から天井の方へ真っ逆さまに落ちる。突然のことに皆が叫ぶ中、ヤマトは得意の木遁で森を再形成して動物共々大きな怪我なく着地した。

「イテテ……怪我してない?」
「大丈夫。すげー地震だってばよ」
「本当に天地がひっくり返ったよ、バカヤローコノヤロー!」

感知した限りだと暁の攻撃を受けて、島亀がひっくり返ったようだ。襲撃者はマダラのチャクラではない。どうしよう、援護に行くかと考えていると、隣のナルトはペンを取り出して、「天地ひっくり返ってもオスはオス……」とバインダーの性別欄を埋めていた。

(こんな時に……!?)

ナルトの視線の先には先程まで縮こまっていたアルマジロが伸びていて、その隣には先程丸まっていた蛇が気絶していた。サキはヤケクソで飛ばされたバインダーを拾って体調を記入してやった。

(ナルトの監視だって任務のうち!ナルトが自力で気づくまでは変に情報を与えないようにしないと、我慢我慢!)

「また地震が来るかもしれないし、早く任務終わらせよう!!動物達が伸びてる隙に!!」
「おう!!」

サキとナルトが任務を再開したため、ヤマト、モトイ、アオバはその場を任せて外の様子を見に行った。



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