目覚め


=木ノ葉の里 地下室=

「痛い、痛い、、痛い、」

ガチガチと歯を当てて結界内の女が呟いた。

女の周囲には四重に張った結界がある。四十赤陣、内側のチャクラを遮断し、如何なる場合でも外側から感知させない高等結界術だ。
その結界の外にはダンゾウより命を受けた忍が二名いた。女の過去を暴き、暁の目的を明らかにすること、それが任務の内容だった。先程本日分の記録を終了し、生命維持装置と結界の確認を行う。

明らかに非人道的な行いだが、これは里の、忍の世界のためだ。仕方がない。


「この女、うちはマダラや千手柱間と関係があったとは……ダンゾウ様の見立ては素晴らしい」
「ああ、それにまさか尾――」


「ッああああああああ!!!!!」


女の叫び声で、会話を終了する。
結界の内側から途方もないチャクラが溢れた。

バリンッッッッ!!!

「何だ、どうした」
「第一結界が破られた。ああ、二層、三層もヒビが、、、ッぐあああ!!」



女がゆらりと立ち上がる。
そして割れた結界を踏みつけながら、気絶する男達に歩み寄る。

「……記憶消さないと」

サキは男達の額に触れた。
そして自分の過去に関わる記憶を消す。
更に相手の記憶を読み、他に事実を知る者はダンゾウ一人ということを知った。


「ッぅう……あたま痛い」

長い夢から覚めた。そして全てを理解した。
自分が何者か、どうして尾獣は人に封印されるようになったのか。マダラ、柱間は誰だったのか。

全てが分かって、そして責任が重くのしかかる。
自分のせいで――何もかも全て――


「ハッ、、、ハァ、ッ、っ、、ハッ」

サキはその場でしゃがみ込んだ。
呼吸が速くなり、ドクドクと嫌に心臓の鼓動が聞こえた。胸を抑えながら下を向くと銀色の長髪が顔にかかった。

記憶が戻ったからなのか、サキの髪は色が抜けて銀色に変化していた。人間から尾獣へ姿が戻っているともとれる。

多くの情報を処理しきれない。
どうしたらいいか、何をすべきか考えがまとまらない。

煩わしい長髪を掻きむしると、頭の上で取り付けていた額当てが落ちた。
木ノ葉マークが目に入る。

(木ノ葉マーク……)


(……そうだ。今の私は"忍"だ)

(落ち着け……一つずつ。手の届くところから、大丈夫、大丈夫)


サキは深呼吸を繰り返して、自分を落ち着かせる。

そして今置かれている状況に思考を傾けた。
忍とは耐え忍ぶ者のこと。焦るな、と自分を言い聞かせた。


***


カツカツ

足音が聞こえた。地下室の外、廊下から。
力の使い方を思い出したサキにはもうその相手は見ずともわかる。

入ってきたのは自分をここに押し込めた人間だ。

「自力で結界から出てきたのか」
「ダンゾウ……」
「フン、やはりお前の隠していた秘密はデカかったな」
「……あなたは最初からナルトじゃなくて私を捕らえるつもりでいた……最初から尾獣の生まれ変わりだと知ってたんですね」
「何を言う。ここで初めて知ったさ」
「それは嘘です。私の記憶を見るなら十六年分の機器で十分なんですよ。なのにここには百年分の記録装置がある。大掛かりすぎるんですよ……」

サキは記録装置を結界に入れてそれごと消失させた。
まさかノータイムで破壊されると思わず、ダンゾウは動揺から足を半歩だして、そして引っ込めた。

「知っていたとしか思えない。私の仲間は口を割らない、割らなかった。だからあなたは、ユサとヒラを殺したんです…………あとは暁くらいしか当てが無いんですよ」
「……」
「疑わしきは罰する、でしたっけ。あなたにも同じことが言えますね」
「フン、お前如きの言い分が通るか。人でもないくせに」

ダンゾウを睨み、そして印も結ばずに赤い縄で縛りつけた。

「あなたのいう通り、最早人間だか曖昧な存在です。だけど言葉でなく、記憶を見て貰えばどっちの信憑性が高いかなんてすぐに皆気づく」
「記憶だと?」
「見せるのは私の記憶だけじゃない。あなたの記憶も」

サキはダンゾウの額に触れて、記憶を読んだ。
ユサとヒラが死んだ時のこと。そして敵と繋がっていた事実が分かる。

「大蛇丸と仲が良かったんですね……」
「貴様ッ……!!」
「ユサとヒラの件は絶対に許しません」
「ハッ、、、ワシを殺す気か」
「殺しません。尾獣は人を殺さない。けど同胞を殺した事はきちんと罰を受けてもらう」

コイツを殺さねば、ダンゾウは身を捩る。
だが赤縄捕縛で捕まっている以上、体を動かせなかった。ダンゾウも戦乱の世を生きてきた優秀な忍だ。
だが、目の前の女は人が及びもしない力を持っている。

(だがコイツの弱点は分かっている。こんな所で使うのは癪だが……)

ダンゾウがある術の準備をしようとすると、突如としてサキが天井を見上げた。
そしてダンゾウを無視して地下室から出て行こうとした。


「貴様、どこに行く」
「暁が来た」
「だったら何故ここから動く。敵の狙いはお前だろう。命令だ!戻れ!」
「相手の狙いが尾獣ならこの里に迷惑はかけられない……あなたもこんなジメジメしたところにいないで、本当に里を想っているならその"借り物"の力で今戦え!!」


サキは出て行く間際にダンゾウを拘束していた縄を解いた。だがダンゾウはサキの後を追うことはなかった。

「化け物め……お前如きにワシの夢は邪魔はさせん」



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