回想D


=火の国 謎の地下=

サキは寝台の上に寝かされていた。
四肢を真っ黒の鉄芯で貫かれ、標本のように固定されていた。赤い液体が貫通部から流れている。一見血液に見えて、人のそれと同じではない。

「起きたか。お前の体も血のようなものが流れているんだな。本当に人間のようだ」
「ねえ、何でこんなことするの?私貴方に恨まれるようなことした?」
「いいや。だが俺にはお前の力が必要だ。俺の夢を叶えるためにな」

マダラはサキの上に馬乗りになって、抑えつけながら金色の瞳を見つめた。

「まずはお前達、尾獣の秘密を喋ってもらう。初めから面倒な事などせずにこうすれば良かったな」
「嫌、やめて、、マダラ」
「目を開けろ。逸らすな。俺を見ろ」

無理矢理目を開かされて、また幻術にかけられた。
それは一ヶ月にも及ぶ拷問となる。




=???=

九喇嘛は愛想のない奴で、普段は他の尾獣に自ら連絡を取る事はない。

「おい、サキを見てねえか」
「俺の所には来ていないな」

一番最初に反応したのは四尾の孫悟空だった。
彼の住む火山地帯にはいないらしい。
続く二尾、三尾も来ていないという。
全員とコンタクトが取れて、そして話をすり合わせると一週間誰もサキを見ていないことが分かった。

「おいおい」
「まさか、人間に捕まってんじゃねえだろうな」
「……チッ、やっぱり人間なんかと関わるから!アイツ今どこで何やってんだよ」
「だけど僕ら、サキの張った結界を抜けられないよ」

九体が集まってもまとめ役などおらず、口々にみな愚痴や不安を漏らす。
尾獣をまとめてきたのはいつだってサキだった。
当然この会話の終着点はなかった。皆いつの間にか言葉を無くしていく。

九喇嘛は満月を見ながら呟いた。

「早く帰ってこい、サキ」




=火の国 謎の地下=

マダラから三日三晩幻術を受けても、サキは決して口を割らなかった。そのため、マダラはサキの生身に傷をつけていった。
現実と虚構の痛みが混同し、とうとう狂い始めたのは一週間経ってからだった。

「そろそろ話す気になったか?」
「あ、、ゥ……」
「尾獣のことについて話せ。お前の知っていること全てを」
「尾獣は、、、十尾を源とする分裂体」
「十尾?神話上の化け物か」
「最強のチャクラ……国造りの神で、チャクラの始まり。十尾の邪悪で巨大なチャクラを、六道仙人が、肉体に封印して亡くなる前に私たちを造った」

マダラはサキの解答に満足気に頬を緩ませる。
ああ、やはり素晴らしい力を持っていた。これは何もかも失った自分に残った最後の希望なのだと。

「"尾獣"は尾を持つ獣と言ったな。何故お前だけ人型なんだ。特別な役割があるはずだ」
「私、私は……人間と尾獣の共生のために、尾獣を守る事で」
「それはもう聞いた。もっと他にあるはずだ」
「私の役割は……十尾を復活させないこと」

サキの頬を愛おしそうに撫でる。
「良い子」と称して、汗をかき、苦しんでいる顔を優しい手つきで。

「十尾は復活出来るということだな。その方法は?」
「十尾の抜け殻、外道魔像に尾獣を戻すこと。九体の尾獣と、私」
「ほう、その抜け殻はどこにある?」

サキは幻術に逆らい、口を塞ぐ。
その姿に舌打ちをして、マダラは重ねて幻術をかける。

(言ったらダメ、それだけは人に伝えちゃいけない。やめろ、やめてくれ)


「ーーーッ、なか……私の中に」
「ふ、そうか。どうやって取り出せばいい」
「あ、、、ぁぁ、、やめて。マダラ」
「サキ。教えろ」

(痛い、痛い、痛い、、、痛い、、)

「魔像は、、私の身体に埋まってる封印石の中。石を取り出しても輪廻眼がないと口寄せできない」
「輪廻眼だと……」
「だからッ……貴方には無理だ。口寄せできない。私にだって、もう誰にも。十尾は復活できない!」


サキは右腕を無理矢理動かし、鉄芯で何箇所も引き裂かれた腕――肉塊でマダラの顔を殴ろうとした。
そんな攻撃を受けるはずもなく、マダラはサキの腕を刀で切り落とした。

「いいや。俺にならできる筈だ。そのために封印石は取らせてもらう」
「やめて……人の手に負える代物じゃない。コレは"憎しみ"に取り憑かれた人間が触れて良いものじゃ、、ッッああああ!!!!」

マダラはサキの胸、人間ならば心臓のある場所に手を突き刺した。臓器でない硬く冷たいものがマダラの手に触れる。

「やはりここか……」

取り出されたのは直径五センチ程度の金色の宝玉だ。
サキの瞳と同じ金色でまるで果実のように丸みを帯びている。神話で言うのであれば、大筒木カグヤが食したとされる禁断の果実――

それを出した瞬間サキは今までの比にならないほど暴れ、悲鳴を上げた。

様子がおかしいと、マダラは一旦宝玉を戻した。

「まさかこれはお前の心臓か?お前にはまだ聞きたいことが山ほどある。さて、お前の力についてもう少し聞こうか」

***


マダラからの質問は一ヶ月続いた。
廃人になりかけても、愛を語ってくる様は狂気的だった。

その間マダラは十尾に強く興味を示した。そして回答の中で、サキが何故神のような力を持っているのかを知る。

サキと十尾の抜け殻はお互いの心臓関係にある。
サキの心臓は"十尾の抜け殻"で、チャクラを貯えるのと同時に、十尾の心臓は"サキ"で、十尾チャクラの創造器官として働く。切っても切り離せない存在だ。

そして十尾チャクラとは自然エネルギー、万物を創造する自然の力だ。それがサキの強さの秘密。


「何故こんなに強い力を持っていて、山奥でコソコソと生きてたんだ?」
「……強大な力を、個のために使えばそれはただの暴力だ。そんなの六道仙人は望んでない」
「ハッ、他人に言われた生き方に沿っていて虚しくないのか?」
「虚しくない。本当に虚しいのは、孤独な貴方の方だ」
「……」


マダラは殺意を持って睨む。
そして自身の夢を叶えるため、またサキの心臓を貫いた。尾獣はチャクラの塊だ。死んでもいつかは復活することは既に聞いている。


「お前が持っていては宝の持ち腐れだ。俺が使う」
「ヒュッ、、、ゴフッ」
「それから九尾を借りていくぞ」
「、、や、、グッ、、、」
「じゃあな。準備が出来次第、お前を迎えに行ってやる」

マダラの顔は憎しみに支配されていた。
もう何を言っても無駄なのかもしれない。
サキが今まで見ていたものは本当にマダラだったのか、信じたくなかった。


「マダラ……なんで」



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