回想C


「しばらく会えない」

マダラがサキにそう伝えてから一年経った。
その時のマダラはとてもやつれていて、唯一残っていた弟が死んだ直後のことだった。
それからマダラは戦いに明け暮れ、千手一族とうちは一族の争いは過激化していく。

マダラは勝ち目のない戰にも向かうため、次第にうちは一族の士気は下がっていった。
そうしてとうとうマダラは千手柱間に敗れた。


柱間はマダラに共に生きていくことを提案した。昔二人で語り合った夢を叶えようと。
マダラは柱間の信念に折れて、うちはと千手が手を取り合い一つの里を作ることになった。

マダラがサキを呼び出したのは、里を作り始めて間も無くのことだった。



=火の国 山間部=

二十歳そこそこになったマダラは貫禄のある男に成長していた。サキは相変わらず十代後半くらいの見た目で変わりはない。彼女は化身で尾獣で人と違う時間の流れで生きているためだ。

長らく会えていなかったため、気まずそうな顔でマダラが「久しぶりだな」と言うと、サキは走って抱きついた。

「会いたかった……」
「色々あってな」
「うん、また聞かせてくれる?」
「ああ」

マダラは柱間と協力して里を作ることを話した。
かつて戦った相手と手を取り合うことに、サキはたいそう喜んだ。
こんなの初めてだ、凄いよと興奮していた。


「それで一つ提案があるんだが、柱間に会ってみないか」
「……」
「柱間は良いやつだし、口も固い。どうだろうか。人との共存に向けて行動してみないか」
「仲間と、考えてみるよ」
「分かった。良い返事を待っている」

マダラは去り際、サキの額にキスを落としていった。
今も変わらず愛していると。




=火の国 河川=

サキは尾獣達を何とか説得して、マダラと待ち合わせをしていた。まだ柱間は現れない。
先にやるべきことがあったのだ。

「黙秘の印は解いた。柱間と会う時に口が裂けても困るしね。なんて言って彼を呼び出したの?」
「久しぶりに修行をしようと言っただけだ」
「修行?」
「ああ、小さい頃は組手をしたり、崖を登ったり、技を競い合った」
「じゃあ今から三人で崖登りでもする?」


マダラとサキが笑い合っていると、川下から男が一人歩いてきた。千手柱間だ。
マダラの横に見知らぬ女が立っていて急いで駆け寄った。

「まさか、マダラのコレぞ!?」


初対面にも関わらず柱間はサキの目の前で小指を立てた。マダラは黙って柱間の頭を殴った。


「痛いぞ。修行するのではなかったのか、マダラ。こちらの女性は?」
「えっと、初めまして。千手柱間さん。私はサキといいます。マダラとは三年位前から知り合いで、私の夢に協力してもらっています」
「夢?協力?」


柱間はよくわからない状況に首を傾げた。

サキは人間ではないこと、自分の他に尾獣と呼ばれる獣がこの世に九体いて、人と隔絶して暮らしていることを話した。
そして、この世界に平穏が訪れた暁には、共存できるようにしてくれないか、尾獣は決して人を襲わないからとお願いをした。

「……サキ殿の言いたいことは分かった。尽力しよう。ところで尾獣とはどんな形をしているんだ?」


サキは河原にあった石で地面に絵を描く。
一尾、二尾、三尾、、、九尾まで書いて柱間は目を輝かす。サキの絵はリアルではなかったが、珍妙な生き物の絵に柱間の心は揺さぶられたらしい。


「なんと!いつか会ってみたいぞ」
「そうですね。いつかみんなを見てもらいたいです」


サキと柱間は性格が似ているところがあって、すぐに打ち解けた。自分の出会った頃とはまるで違うと、マダラは少しだけ面白くなかった。
けれどこうしてサキが話せるのは、紛れもなくマダラのおかげだった。


***


時が流れ、木ノ葉の里が火の国と協定を結び、火影という忍里のトップを決めることとなった。
柱間はマダラを推したが、弟の扉間から断固反対された。
柱間の弟、扉間はうちは一族、特にうちはマダラを危険視していた。
たまたま柱間と扉間の話を盗み聞いたマダラは、いずれはうちは一族を滅ぼされると考えた。

そしてその危惧から、一族の皆に共に里を抜けようと提案した。
だが既に戦いに疲れていた一族は、誰も着いていかず、マダラを厄介者扱いするようになった。
結局里の者の意見も強く柱間が火影になり、マダラには居場所がなくなった。




=木ノ葉の里 南賀ノ神社本堂=

マダラは柱間を呼びつけ、代々うちは一族に伝わる石碑を見せた。この石碑は解読に瞳力を必要とする特殊な読み物だった。

「今俺が解読できるところまでにこう書いてある」

「"一つの神が安定を求め陰と陽を分極した。相反する二つは作用し合い森羅万象を得る"」

そのままの意味を受け取るのであれば、相反する二つの力が協力することで、本当の幸せが得られると謳っている。
だがこれは「別の意味でも捉えられる」とマダラは言う。
柱間には何のことだか分からなかった。

そしてマダラは自分にはもう居場所がないと愚痴をこぼす。

「これ以上は無理だ……俺は里を出て行く」

「俺は別の道を見つけた」

マダラは柱間に背を向けた。
柱間の話は聞かずに一方的に語るのだった。

「"本当の夢"の道へ行くまでの間、お前との闘いを楽しむさ」




=火の国 森の中=

かつてマダラに渡した鈴が振られ、サキは結界の外に出てきた。夜に呼び出すなんて珍しい。
サキはマダラの気配のする方へ歩いて行く。

マダラは大木の下に座っていた。
頭が下を向いており、呼び出しておいて眠ってるのかとサキは手を伸ばした。

「マダラ、眠ってるの?」

ガシッ

伸ばした手を掴まれ、もの凄い勢いで引っ張られた。何かのサプライズなのかと思ってサキは為されるがまま抱き寄せられた。

「どうしたの?いきな、り……?」

至近距離で見たマダラの目は真っ赤な万華鏡写輪眼で、黒の紋様が揺らいだ。
万華鏡写輪眼を開眼したマダラの方が瞳力は上だ。

サキは生まれて初めて幻術を受けた。
体から力が抜け、マダラの懐に収まる。

「お前だけは俺を愛してくれるだろう、サキ」



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