ダンゾウ


=火影執務室=

サキの暴露に綱手は大声を上げていた。
二度目のことにサキは思わず苦笑いを浮かべる。

「全く。驚いたよ」
「ですよね。隠しててすみません」
「はー、これからの対策を立てないとな。この事実は言わないまでも、暁に捕らえられた事実は上役にも連絡が入っている」
「はい」
「恐らく……また外出禁止だと言われるだろうし、」


綱手の言葉を遮るように執務室の扉が叩かれた。
入ってきたのは、シズネと長老が二人。確か相談役の二人だ。


「ああ、うずまきナルトとサキの処遇について話に来たが、まさか片方はいるとは」

相談役の水戸門ホムラがサキを見ながら言う。
サキは初めて目にする里の上役に黙っているしかなかった。

「今日は急だな。こちらにもスケジュールがあるんだ。相談役とはいえアポイントはとってもらわないとな」
「……急ぎの用事だったからね。ここでは何だから、談話室の方へ移ろう」

もう一人の相談役、うたたねコハルは更に続ける。
「サキも同席しなさい」と。
綱手とサキは顔を合わせて、黙って頷き合った。



=談話室=

「つまり、ナルトとサキを暗部の監視下に置き、里から出すなと言うことか……そんな話が呑めるか!」
「どちらも暁に狙われておる。暁の活動が再開した今、里の外に送り出すのは捕まりに行くようなものだ。この娘が典型的な例だったな」
「……」
「砂隠れの一件もある。里内に隠そうが、結局暁は里まで奇襲してきた。それでは木ノ葉を危険に晒すことになる。それよりも二人にはきちんと護衛をつけ外に出てもらい、動きを把握させない方がいい」


相談役の申し出に綱手は反対する。
捕まってしまったサキには反論のしようがなく、綱手が何とか頑張ってくれる。

ピリピリと空気が悪くなってく中、談話室の扉がたたかれた。
「入れ」とコハルが入室許可を出すと、黒髪の老人が入ってきた。
額から右目を包帯で巻き、口の下には十字の傷がある。
また右腕は黒い着物の裾内に隠しており、カカシ並みの特徴のオンパレードだ。

(誰?)

「ダンゾウ、、」
「ダンゾウ?」


綱手が呟いた名前に心当たりがあった。カカシに教えてもらった、木ノ葉の裏を統べる根のトップだ。
ユサとヒラを引き抜いた可能性のある人間だ。

処遇について、話がヒートアップしていく中、やはりナルトはまだしもサキについてはフォローしきれない部分が出てきた。
相談役らはサキの正体を知らず、暁に狙われる不確定要素だという。
そもそも何者なのかきちんと説明を求められ、綱手は黙る。

(これ以上綱手様やナルトに迷惑はかけられない)

「……申し訳ありませんが、私自身暁に狙われる理由を掴んでいません。相談役様が私を懸念する理由も里に閉じ込めたい意図もよく分かります」

「今回のことは私の弱さが招いた結果なので、きちんと責任は取ります。ですが、ナルトは関係ありません。ナルトは七班で今まで通り任務に当たらせてください」
「サキ、勝手をするな」

サキは綱手の忠告を無視して続けた。

「ナルトは強い。風影を救ってみせた。これからもっと強くなります。私は暗部の監視下に入ります。けど、ナルトは」

サキの言葉を遮り、ダンゾウが口を挟んだ。

「良いだろう。ナルトの保護については無しとしよう。だが、代わりにサキ、お前は根の中で観察する」
「分かりました」
「……」


まさか自ら根の内部に入れてくれるとは。
それから話は第七班の編成の話題になり、サキはその間ずっとダンゾウを見つめていた。

(コイツ、何か隠してる。ユサとヒラのこと、隠してるのコイツに違いない)



全ての話が終わり、火影執務室に戻ったサキは綱手にこっぴどく怒られた。
けれど、サキがユサとヒラのことを話すと、ダンゾウの懐に入った経緯を理解してくれた。


「明日、迎えのものが行く。それまでにナルト達に事情を話しておきな。表向きの方をね。恐らく一度根に関われば長く出てこれない」
「はい……大丈夫です。今自分にできることをします」



=木ノ葉の里 中央病院=

サキは長らく家を空けることになる。
家の整理をしてからカカシの見舞いと退院手続きのために病院に向かった。
どう切り出そうかサキが思案していると、カカシが口を開いた。

「さっきヤマトって七班の新しい隊長が挨拶にきたよ。顔合わせをしたら天地橋に向かうってさ」
「そうですか。流石早いですね」
「ああ。暗部時代の俺の部下でね。強さは保証するよ」
「それは安心です。カカシさんも早く元気になってくださいね」
「そうだね。暁に対抗するためにナルトも、サキも強くしないとね」


カカシの言葉に、サキは一呼吸おく。
手に力を込めて、カカシの目をまっすぐ見つめた。


「カカシさん……私はしばらく身を隠すことになりました」
「身を隠す?」
「二度も暁に捕まったので、ダンゾウの元に行くことになりました。表向きは暗部の長期任務ということになりますが」
「なっ……危険すぎる。綱手様は止めなかったのか」
「綱手様は止めてくださりましたよ。でも私がユサとヒラのことを知りたくて、突っ走ったんです」

ユサとヒラのことだけじゃない。
暁のアジトで見た木像の正体。"心臓"の意味。
既に捕らわれた尾獣。今狙われている尾獣、人柱力。
忘れている前世の記憶と力……
問題は山積みで、その割に解決方法も分からないものばかり。

「問題が山積みだから一つずつ何とかしていきたい。じゃないとずっと不安なままです」
「……」
「ナルトのことよろしくお願いします」
「分かった。無茶だけはするなよ」



=自宅=

「あ、ナルト。良かった、任務に行っちゃう前に会えた」

新しい第七班の顔合わせを終えて、出発準備に帰ってきたナルトを待っていたのはサキだった。

「あー!サキ!動けるようになったのか!」
「うん。復活したばかりだけどね」
「じゃああんな奴じゃなくてサキに七班に入って欲しかったってばよ」

どうやらサスケの代わりに補充された人物とはそりが合わないみたいだ。立ち話も何なので、ナルトの部屋に通された。




=ナルトの部屋=

ナルトは放っておくとすぐに部屋を散らかす。
砂隠れの里から帰ってきて間もないはずなのに、脱ぎっぱなしのパジャマや、カップラーメンのゴミがそのままだった。

「ナルト、出発前にちゃんと片付けなよ」
「わーってる。サキってば昔から俺の部屋来るとあれしろこれしろ、いつも言うよな」
「ナルトのためを思って言ってるの。全く」


サキは笑いながら、勝手にゴミ袋を取り出してカップラーメンやらポテチのゴミを捨て始めた。
小言を言いながら手伝うのがサキなのだ。
出発準備と部屋の片付けを同時並行で行いながら、サキはナルトに自分のことを話す。


「あのさ、私しばらく暗部の任務につくことになったから」
「暗部の?いきなりどうしたってんだ」
「暁に二回も攫われてるからね。公の任務からは外されちゃったわけ」
「そっか……でも会えなくなるわけじゃないだろ」
「うん。でも長期任務だから当分家に帰らないかな。私がいなくてもちゃんとご飯食べて掃除するんだよ」
「何だよそれ!サキがいなくたって生活できるってばよ!」
「そう?なら良いけど。支度も済んだし、出ようか」
「ああ」


ナルトの部屋から出て、廊下でナルトを見送る。

「じゃあ無茶しないように。ナルトはサスケ関連じゃすぐに熱くなるから」

「またね」

サキはナルトの腹をトンと叩いた。
丁度九尾の封印術がある場所だ。


ナルトのこと頼んだよ、と声に出さないまでも九尾に語りかけた。

ナルトの中にいる九尾は、かつてのサキが人間に裏切られる前、自分達の元から消えた瞬間を思い出した。
何か嫌な予感する……しかし今はどうしようもない。
こんなガキの中に封印されているのだから、と九尾は何も返さなかった。




=木ノ葉の里 地下通路=

サキはダンゾウと二人薄暗い地下通路を歩いていた。
本来、根のものしか来ることのできない基地だ。


「お前は物分かりが良くて助かる」


サキが自らダンゾウの元へ来たことを言っているようだ。
前を歩くダンゾウの顔は見えないが、碌でもないことを考えているのはわかる。


「確認したいことがあって、都合が良かっただけです」
「……ユサとヒラのことか」
「やっぱり貴方が隠してたんですね」
「奴らはもういない」
「、なっ、、どういう意味ですか」


出鼻を挫かれた。
ここに来れば会えると信じていた。そうじゃないと三年も音信不通だった仲間の心配で押し潰されそうだった。


「三代目の死後、お前に対して何の咎めを無かったことを覚えているか。中忍試験の乱入及び木ノ葉崩しを実行した砂隠れの忍を庇う動き」
「覚えています」
「奴らはそれに加担した」


確かに我愛羅を庇ったサキは、その後後退しようとする我愛羅たちを追い、その前に砂の上忍が現れた。
一戦まみえようという時に、ユサとヒラが現れて、サキのために道を作ったのだ。
ダンゾウはその事を言っているらしい。


「奴らはその理由を何も話さなかった。そのため反逆者として処刑した」
「な、、ちゃんとした理由も調べずに、話さなかったからって殺したんですか」
「情報が重要な世界だ。仕方あるまい」
「納得できません!!」
「奴らは命を賭して何かを守ろうとした」

ダンゾウは三年前の事をサキに語った。


***


この地下施設に引っ張ってこられたユサとヒラは酷い拷問を受けながらも決して口を割らなかった。

『サキは敵ではありません』
『砂を庇った。敵に味方するような奴は敵ではないのか』
『違います。彼女は三代目に忠誠を誓う木ノ葉の忍です』

"三代目"という言葉にダンゾウはイラつきを募らせた。ヒラを蹴飛ばし、腹を打ち続ける。

『では予選で見せた不可解なチャクラは何と説明する』
『ゲホッ、本人にも分からない力です』
『お前たちは何かを隠している』
『……俺たちは尋問されても話しませんよ』


弱っていくヒラに代わりユサが話し始めた。

『ダンゾウ様、あなたがしていることと同じです。自らかけた呪印、秘密は決して明かしません』


舌を出し、そこに刻まれた印を見せる。
黒い四角の紋様が見えたのだ。ダンゾウは舌打ちをしてヒラの頭を踏みつけた。

『サキは誰も傷つけない。この里の敵にはならない』
『そ、いうことだ……バーカ』


いつもは丁寧口調のヒラは、薄く目を開いて舌を見せた。

『疑わしきは罰する。お前らは反逆者として殺す』


***


「ワシも鬼ではない。二人に免じお前の動きを陰から観察していた」


サキは怒りで震えていた。
皮膚に爪が食い込んで血が出てるのにも関わらず、手を握り続けた。


「そしてお前は暁に二度も捕らえられた」

「その秘密は木ノ葉を陥れるものではないのか」
「……」
「ワシら根の人間は里に仇なすものを陰から抹消し里を守ってきた。お前が何者かしかと見極めさせてもらう」

ダンゾウは黒い着物から右腕を出した。
そして包帯をとっていく。

「な、んで、、その眼」


ダンゾウの腕には十数個の赤い眼球、写輪眼が埋め込まれていた。


「お前の秘密を暴く」

バチンと脳の回路がショートして、多大な情報が脳に流れ込んだ。写輪眼を前にすると、いつも現れる男。
より鮮明に、長く――――


『お前だけは俺を愛してくれるだろう、サキ』



サキは床に倒れ、ダンゾウは部下にサキを運ばせる。
そこは拷問部屋だ。ユサとヒラの死んだ場所である。


「装置をつけろ」




prev      next
目次



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -