編入試験


=アカデミー 職員室=

イルカは編入試験のための書類を整理していた。
そろそろサキが来る時間だ。今日のアカデミーは授業がない所謂休校日でイルカ以外に教師はおらず、静かなものだった。

更に今日は天気も良く外で体力試験が出来そうだった。晴れて良かったなと思いながら、今日の試験項目の書かれた書類を再確認する。
すると突然換気のために開けていた窓から強風が入ってきた。

「おっと、書類が飛んでしまう。閉めたほうがいいな」

イルカが急いで窓を閉め、自席に戻ろうとすると、口元を布で隠した白髪の忍が立っていた。ほうき頭という表現がピッタリの男だ。

「誰ですか!部外者の立ち入りは困ります」
「あはは、卒業生だよ?それにしても、こんな時期に編入試験ですか」

白髪の忍はイルカの席に置かれた編入手続きの書類を見つめた。

「なになに、サキ…苗字はなし」
「四ヶ月程前にうちの里に来た子です。生まれが木ノ葉ではないので手続きに時間がかかりましたが、火影様の意向もあって来年ではなくこの時期に。この子うずまきナルトとも仲がいいので、同じ学年にとの計らいです」
「へえ、優遇されてるねえ」
「身寄りのない子ですから。ところで本当に誰ですか!?」

イルカが白髪の忍に掴みかかろうとしたとき、職員室の扉が叩かれた。

コンコン

「失礼します」
「よく来たね。もうこんな時間か」
「はい。その人も先生ですか?」
「俺は先生ではないよ。この里の忍のはたけカカシ」

挨拶したから良いでしょうといった風に、カカシと名乗った忍は図々しくも試験を見学したいと申し出てきた。
サキもイルカもこれには驚いた反応を見せた。

「何言ってるんですか!?学校関係者でもないのに」
「いいからいいから」
「ダメですよ。変に緊張させて試験に集中できなくなったらどうするんですか」

イルカがまたもカカシに掴みかかりそうな勢いだったため、サキは渋々了解した。

「……良いですよ」
「いやー、話が分かるね!流石だよ」
「サキ、嫌ならちゃんと断るから!我慢しなくて良いんだぞ」

マスクで口は見えないが、カカシの目が嬉しそうに笑った。その表情と逆にサキは顔を顰めた。
この男は何か企んでる、油断ならない、と脳内で警鐘が鳴っていた。

「この人がいたって緊張なんてしませんよ。行きましょう、イルカ先生」


イルカとサキが職員室から出て行くと、カカシは一人呟いた。

「すっごい喧嘩腰、可愛くないねえ」




=アカデミー 演習場=

筆記試験を終えて、実技試験のために演習場に移動した。筆記試験の手応えは上々で心の中でヒラに感謝を伝える。
続く実技試験は長距離、短距離走と人形相手の体術試験だった。
一ヶ月入念に準備してきただけあって、サキの実力はイルカの満足いくものだった。

「これならナルトと同じクラスになれると思うよ」
「本当ですか?嬉しいです」

しかしカカシだけがその結果に満足していなかった。

「ねえ君、何か術は使える?」

イルカとサキが笑い合っていると、カカシが水を挿した。その空気の読めなさにサキは思わずカカシを睨みつけた。
一触即発の空気を感じ取ったイルカが苦笑いを浮かべて割って入る。

「忍術はまだ習っていないからできませんよ。これから学校で覚えればいいんだから。な?」
「本当に?」

会ってからずっと値踏みする様な視線を送ってくるカカシという男。そんなものじゃないでしょと挑発的な態度を取られ、サキの堪忍袋の尾がとうとう切れた。

「結界術なら少し使えます」
「良いね。それ見せてもらえる?」
「その前にどうして見学にきたのか理由を教えてください」
「気になるからさ。君のこと」
「……」

サキはカカシからクナイを三本借りた。
イルカはいきなりクナイを渡すカカシにも、それを受け取るサキにも声を荒げた。

「ストップ!ストップ!今日の試験は終わりましたから!!」

静止の声を聞かずにサキはカカシに向かって二本のクナイを投げた。
空中でクナイ同士が当たり、カカシの立つ位置から斜め後ろ、左右に均等に地面に刺さる。へえとカカシの目が細まって、サキは残る一本をカカシの前方に投げつけた。

「四面結界、展開」

地面に刺さる三本のクナイを頂点として、カカシの周囲に三角錐の結界が現れた。透明度の高い赤色の結界だ。
コンコンと扉をノックする要領で内側から叩いても割れず、強度も十分だった。

「お見事。凄いね、赤色結界は強力で血筋に影響するって言い伝えだけど、こんなに鮮やかな赤は初めて見たよ」
「な、、、サキ、忍術使えたのか。どこで習ったんだ」
「秘密です。他の術はちゃんと学校で習います」
「ああ、そうか……」

三代目からサキの詮索を禁じられているイルカはそれ以上は聞かなかった。だがカカシは違った。

「流石は狐憑き」
「ちょっと!?」

カカシが呟いた一言にサキは自分で張った結界を力一杯に殴った。そして何も言わずに演習場から立ち去った。

「あ!サキ!!、、カカシさん!!」
「あはは、怒らせちゃったね。狐憑きって言うと怒るなんて知らなかったんだよ」
「彼女に謝ってください!そもそもそれは禁句と言われてるはずです」
「分かった、分かった」

カカシはサキの背中をじっと見つめた。

(なにか重要な秘密がある……火影様が隠そうとしていること、やっぱり九尾に纏わることだ)

「あ、地面のクナイ外してくれるかな。赤色結界は強力で困るね」
「はああーー、、」

イルカは大きなため息をついてクナイを外し、カカシに返却した。


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