忍への入り口


=木の葉の里 中央病院=

あの晩から一夜明けてサキはナルトの見舞いに来た。

三代目が早々に手を打ってくれたおかげで、九尾が一瞬解き放たれたことはその場に居合わせた人物だけの情報で収まり、さらに事件の後処理はその日担当した暗部に全て任され、無かったこととして片付けられた。
そのため一般の忍にも里の人にも情報が出回ることはなかった。

「ナルト、昨晩はごめんね。まさか野生の熊に襲われるなんてね」
「マジ?俺昨日の記憶ねえってばよ」
「だって頭をぶつけてたし。危険な目に合わせてごめんね。里の忍者が助けてくれたんだよ。たまたまウチにアパートの管理人さんがくる日で、家にいなかったから捜索してくれたみたい」
「そっか。何が何だか分からねえけど命拾いしたってばよ」

ナルトの怪我は医療忍術のおかげで綺麗に治っていた。夕方検査して問題なければ退院になる。サキも外傷は全てヒラという暗部の忍に治してもらったのでピンピンしいる。

「ていうか助けてもらったってことは、里の外に出たのバレたんだよな!」
「うん。ナルトが寝てる間にすっっっごい怒られた。私が言い出しっぺだったし、ナルトは怒られないよ」
「ええ!起こしてくれたら一緒に怒られたってばよ」
「気持ちだけもらっておくよ。あ、あとね私特別にアカデミーの編入試験受けれることになったの」
「マジ?!すげー!!てことはサキも一緒に学校行けるんだ」
「うん!試験頑張るね」




=火影執務室=

時間は巻き戻って、昨晩のこと。

「さて、正しく忍術を学んでもらう上でアカデミーには入ってもらった方が良いだろうのう」

九尾の自由化についての話が済むと、三代目は編入試験の説明をした。数ヶ月前イルカには来年の入学試験を受けてくれと言われたものの、即時修行を始めたいこともあり特例で受けさせてくれるようだ。

編入試験は読み書きや計算といった簡単な筆記試験と学校に入る上で体力が十分か測る実技試験の二つ。そして試験は一ヶ月後とし、それまで同室にいるユサとヒラに監督を頼むことになった。

「例の術についてはどうしましょうか」
「赤い鎖についてか」
「出来ればアカデミーに通う傍で、僕たちでサキさんに可能な限り術を教え、鎖の術を安定して使えるようにしたいのですが」
「ふむ、良いだろう」

口を挟む暇もなく、この場にいるユサとヒラが学校編入後も監督員としてサキにつくことになった。

「そんなわけでよろしく。さん付けじゃなくてもいいかな?サキちゃん。僕はヒラ。専門は医療忍術ね」

ヒラと名乗った黒髪男は狐の面を外した。後ろも前髪もおかっぱで、それだけでも特徴的なのに加えて糸目だ。そして何より若い。とても大人に見えないけれど、サキくらい子供ともいえない。

「いくつですか?」
「十五歳」
「え!そんな若いのに火影様の下で仕事してるの!?」
「まあエリートってやつだよね」
「そんな人が先生なら絶対試験余裕だよ」
「ほら、ユサも挨拶して。長い付き合いになると思うよ」

ユサと呼ばれる茶髪の狐面は嫌そうに面を外した。さらに舌打ちまでして、たいそうサキのことを危険視していて、ようは嫌いみたいだった。

「ユサだ」
「こいつ無口な割にキレやすいけど、僕と同期で優秀なんだよ。ユサは感知タイプの忍ね」
「忍にも種類があるんですねー」
「そういうこと。サキちゃんが忍術を学んでいく上で得意分野も見つかるはずだよ。まずは目先の編入試験を頑張ろう!筆記は僕が担当、実技はユサが担当するね」
「よろしくお願いします!」




=地下演習場=

編入試験は公でも、訓練については秘密だ。
なので里の外れにある地下演習場で、誰にも知られることなくサキは週四回筆記と実技訓練をしていた。
早いもので訓練を始めて三週間が経過した。

「まさかここまでとは」
「試験前にチャクラを練れるようになるなんて凄いよ!」
「やった!もしかして私もエリートになれるかな」
「なれるなれる!天才だよ!」
「自惚れんな。まだ一個も術使えないくせに」
「えー。じゃあ何か術を教えてよ」

ユサは大きなため息をついて、基本の術を見せてくれた。
ゆっくり手を動かしてくれたのだろうが、サキはまだ印を覚えていないので見様見真似でその動きを追うので手一杯だ。
金縛りの術、変わり身の術、分身の術、変幻の術、サキはどれも出来なかった。

「くっそー」
「まだ完全に印も覚えてないんだからしょうがないよ」
「他にも基本の術ってないの?」
「……あ」

ヒラはハッとしてサキの肩を掴んだ。

「サキちゃんが今できる術があるかも」
「本当に!?」
「まずは印を教えるね」

ヒラはサキの真横に立って、丁寧に印を教えた。サキの正面でただ術を見せてくれただけのユサとは違う。ユサはむすっとしながら少し離れた場所で二人を観察した。

「大事なのは空間を把握すること。あと標的をちゃんと見ること」

サキはユサを凝視した。印の種類で何をされるか分かったユサは「俺かよ」という突っ込んだが、サキはそれを無視して集中した。

ゆっくりとだが印を正確に結んでいくーー

「"四方結界"」

ユサを囲うように立方体の赤い結界が現れた。

「赤い、結界、、」
「やっぱり結界術や封印術が得意分野みたいだね」
「ッ、、はあ、はあ、はあーー、疲れた」
「お疲れ様。凄いよ、四方結界。いや、赤色ってことは"四方紅陣"だね」
「四方紅陣、、?」
「木ノ葉に伝わる結界はね、赤色に近いほど強度が上がるんだ。上級の結界術、封印術には赤や紅って言葉が入る術が多いし。簡易な結界が赤く染まるのは結界術に秀でた忍ってことなんだよ」
「ーーほら!やっぱり天才じゃない!」
「あーうるせえうるせえ」

サキは喜びを隠せずにユサをポコポコと叩いた。ユサは鬱陶しそうに眉間に皺を寄せている。
三週経ってなんだかんだ距離が縮んできた二人の様子を見て、ヒラは横でケラケラと笑った。

一週間後、編入試験への不安はない。サキは二人に礼を言って地下演習場を後にした。


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