三代目との約束
=火影執務室=
「そんな感じでナルトと友達になって、九尾とは夢、というか精神空間で会って、計画を進めました」
事のあらましを説明すると三代目火影、猿飛ヒルゼンは顔を歪ませた。
「九尾と精神空間で会っているとはな。ふむ、忍術を学んでいない子供が出来るものではないはずだが」
「……九尾側が特別彼女を受け入れてる可能性がありますね」
ヒルゼンの後ろにいた狐面、黒のおかっぱ頭の男も言葉を添えた。
「お主と九尾は、……友達で、封印を解いたのはあくまでも個人的なものだったというわけじゃな」
「そうです。里の人達はナルトも九尾も毛嫌いしてる。九尾は昔この里を襲ったから嫌われるのは分かるけどナルトは関係ない。九尾が封印されていることでナルトが不幸になって、九尾もずっと檻の中にいるのは可哀想だと思った」
「嘘はついてません」と今度はサキの後ろにいる狐面が火影に向けて話す。こちらは茶髪のツンツン頭をしていた。
(嘘ついてるかどうか分かるの?忍者って凄いんだな)
「そうか。理由はどうあれお主のした事は犯罪に当たる。だがお主はまだ子供で、善悪を教える大人が周りにいなかった。さすれば原因は里側にもある」
「……」
里長に犯罪だと言われて、サキは俯いた。
(ナルトを傷つけたのは誤算だったけど、封印を解く事自体は別に悪じゃないじゃん。九尾に一生封印されてろって言うの……)
明らかに反発しているサキを見て、ヒルゼンは一先ず話題を変えた。
「赤い鎖で九尾の力を抑え込んだというのは本当か?」
「そうだと思います」
こんな小さな子供が九尾ほどのチャクラを抑え込むなど俄かには信じられない。だが本当にそんな力が存在するのであればーー
「あまり考えたくないですが、九尾が暴れた時対抗する手立てになりますね」
ヒルゼンの後ろにいた黒髪の男もヒルゼンと同じことを考えていたらしい。ヒルゼンは頷き、サキに顔を上げるように言った。
「ワシの元で修行してみないか」
「修行って、忍者の?」
「そうだ。正しく忍術を覚えるのだ」
突然の提案にサキの頭は追いつかなかった。
(忍術を覚える……つまり?)
「忍術を覚えたら、ナルトの封印を正しく解けるようになりますか?」
「……ッはははは!!」
「おい、ヒラ!」
ヒラと呼ばれた黒髪の男は場に不釣り合いなほど爆笑した。そしてサキの後ろにいる茶髪の男がそれを注意をする。
「いや、こんなに反省の色がないなんて」
「お前封印を解いた後、九尾をどうするつもりなんだ?」
「自由にしてあげる。もう人に封印されなくていいように」
「三代目!このガキやはり危険ですよ。生かしておくにも記憶を書き換えるなりした方がいいです」
ヒラという男とは逆にサキの背後にいる茶髪男は怒りを孕んだ声でそう言った。ヒルゼンはやれやれと二人を宥める。
「落ち着け、二人とも。九尾と通じてる子供だ。下手に刺激してはいかん……サキよ」
「はい」
「九尾のことはすぐに解決できる問題ではない。なにしろ九尾は我々を恨み、我々は九尾を恨んでいるからな」
長らくこの里に縛られてきた九尾と九尾に里を襲われた人間側。互いに憎み合っているもの同士の間に勝手に立って、第三者にも関わらずバランスを崩そうとしたのだ。
(確かに反感を買うか……)
長々続く火影の説教にサキの考えもとうとう変わってきた。
「自由にしたいなら、九尾を里だけでなく世界に認めさせなければならない。もう人間を傷つけないと証明しなければいけない。今回の方法ではそれが出来ないことは分かるか?」
「……はい」
「よし。正しく証明する方法は誰にも分からない。サキが本当に九尾を自由にしたいと思うのなら、里と世界に正しく証明しなさい。そのためにも忍の世を知ること。人間と九尾の中立に立つことを薦める」
確かに忍のこと、忍術を知れば封印を解く手がかりは知れるし、人間にも九尾は安全だと証明するには第三者でも九尾の味方でもなく、中立の立場がいいのかもしれない。
「じゃあ証明できたら……九尾を解放してくれると約束してくれますか」
「いいだろう」
この日サキと火影の間に極秘の約束が取り付けられた。知ってるのは同席したユサとヒラという暗部のみーー
長い夢の第一歩だった。
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