真の黒幕


光が完全に消えて、もう一度夜が訪れた。サスケは須佐能乎を解除して第七班のメンバーを解放する。
ナルト達の前には、黒ゼツに乗っ取られたままのオビトが立っていた。

「後ハ、オ前達ヲ処理スルダケダ」

その黒ゼツの前に、上空からものすごい勢いで下降してきたマダラが立つ。

「世界の救世主たる俺がな」

「こんなの嘘っぱちじゃねーか!!」

変わり果てた世界に対しナルトは叫んだ。
だがマダラは自分の成したことは正しいことだと疑わず、ナルトの言葉を一蹴する。

「ナルト…皆の幸せの邪魔をしているのはお前だ。俺は地獄を天国へと変えた。もう理解しろ、全て終わったのだ」

世界は全て自分の手中に入った――
そんな気でいるマダラの背後でゆっくりと動く影があった。

「違ウ…マダラ……オ前ハ 救世主デモナク…ソシテ終ワリデモナイ」

真っ黒の腕がマダラの心臓を貫いた。
十尾の人柱力となったマダラをもってしても動けない支配力――黒ゼツに操られるオビトの左腕だった。
マダラの体は全く制御が効かず、それこそ乗っ取られていく感覚さえある。

「ナゼ オ前ガ オビト トハ違イ、全テヲ 利用スル側ダト言イキレル。自分ダケガ 違ウト思ウノハ オコガマシクナイカ」
「何を言っている。お前を作ったのはオレだ。お前はオレの意志そのものなんだぞ」
「ソレモ違ウ。オレノ意思ハ……カグヤ ダ」

いきなり仲間割れを始めたかのような光景にナルト達は困惑した。

更にまたしてもナルト達とマダラ達の間に向かって何かが降ってきた。

「一体何ッ?何が起きてるの!?」

土煙を払うと、目の前には銀髪の女が立っていた。
サクラは驚愕の声を上げ、カカシもまさかと驚く。

「サキ!?え、何で!」
「幻術にかからなかったのか」

サキはサクラとカカシの声に反応する余裕がなく、じっとマダラを見つめた。黒ゼツの支配が広がり、その影がマダラの身体を苦しめる。

「グオオオ!!」

事態を察したサキは、後ろを振り返るとナルトに向かって左手を出した。

「ナルト、これお願い」

反射的にナルトは右手を上げて、パチンと乾いた音が鳴った。
手が離れた瞬間に二人はチャクラで繋がり、預けられたチャクラがゴムのように伸びた。
ようは持っていて、という意味で――

「え、これって、、サキ!!?」

サキはそれ以上何も言わずにマダラの元に突っ込んだ。

ビシッ 

サキが飛び出した途端、ナルト達の立っている地面が割れて、熱泉が噴出するように大量のチャクラが湧き出た。ナルト達を取り囲む規模のチャクラは、全てマダラの体へと集まっていく。

「何だ……吸収しているのか」
「どこから、こんな……濃い大量のチャクラが」
「無限月読に捕まっている奴らのものだろう」

サスケの言う通り、これらは無限月読にかかったもののチャクラだ。マダラが語った無限月読のさらに先。
本来の目的が今果たされようとしていた――

この場でそれを完全に理解しているのは黒ゼツとサキだけ。ナルトとサスケは六道仙人から聞いたカグヤという母親のことを思い出し、まさかと可能性を考えた。

その上で、ナルトはサキが何をしようとしてるのか分からなかった。サキに渡されたチャクラはマダラの方に向かって伸び、ナルトは吸い込まれそうになっているチャクラを思いっきり引っ張った。

「サキ!何するつもりだってばよ!!」

ボコンボコンと、マダラの身体がチャクラに耐えかねて膨れ上がる。サキはそこに右手を突っ込んで、荒れ狂うチャクラに身体を持っていかれないように足に力を込めた。

集まってくるチャクラを何とか自分の体に取り込んで地面に戻していく。だがとても扱い切れる量ではなく、時間稼ぎにもなりそうにない。
マダラの体の膨張は止まらずに、悲痛な叫びが耳に入ってきた。

「あ゛アア゛あああ!!!」

サキの右手も膨張する肉片に圧迫され、痛みが増す。
マダラの体を支配する黒ゼツが、痛みに耐えるサキを見て嘲笑った。

「オ前如キニ 操レル チャクラ デハナイ。自分ヲ殺シタ 人間ノタメニ 命ヲ張ルトハ 滑稽ダナ」
「うるさい黒ゼツ!お前が私とマダラのことを語るな!!」

サキは右腕を奥に奥に進めながら怒りのままに叫んだ。そしてもはや人間の形を成していないマダラに向かって怒鳴りつけた。

「ッ、このまま人柱になるだけなんて絶対許さない!今までのこときっちり謝ってもらうんだから!」

サキはこの膨大なチャクラの中からマダラのチャクラを探した。氾濫する河川から小石を見つけるようなものだ。

マダラのチャクラは他のチャクラに揉まれて、全く掴めない。でも一つになってしまう前でないと手遅れになってしまう――

「こんな奴に出し抜かれないでよ!!あなたは忍界最強の"うちはマダラ"なんでしょ!!」

サキは声が枯れるほどの大声を上げた。
それは後ろにいるナルトやカカシにもよく聞こえる程。

「お願い!!私の手をとって!!」

その叫びの後、サキの右腕は膨張するチャクラに完全に持っていかれた。ナルトは繋がっているチャクラからその変化を感じ取り、そこからサキを引っ張り出した。

「無茶しすぎだってばよ!!」
「ごめん、助かった」

片腕を無くしてまで何がしたかったのか、状況が把握できないナルトの焦りとは反対に、サキは怒りをぶつけて清々したのか妙に落ち着いていた。

「でも、これでマダラと対話できる」
「……何が起きてるんだってばよ」
「黒幕が他にいたんだよ。マダラでさえも利用されてた」

膨れ上がったチャクラは黒色に凝縮し、オビトの体が捨てられるように地面に落下した。
そしてチャクラの塊は段々と形を成していく。

「黒幕って、やっぱ大じいちゃんの言ってた……!」
「六道仙人の母親」

それはかつて兎の神、鬼と呼ばれた白い女性の姿へと変貌した。
額には輪廻写輪眼を、両目には白眼を開眼させている美しい女性。

大筒木カグヤに――


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