月花に謳う



5




 テスト期間に入った。週末に温室へ行こうとして、それを見越したように月花さんから『テスト期間だって聞いたよ。しっかり勉強するように』とメッセージが来てしまったから、これは釘を刺されたのかな、と温室へは行かずに終わった。

 この学校は上流階級者が多いからか、偏差値もそこそこ高いし、授業のレベルも高い。基礎的なことはさっさと終わらせて応用問題を解いたりすることが多くて、テストも実戦形式だから何が出るか分からない。きちんと理解できていないと問題も解けないのだから大変だ。
 中間テストのときも思ったより少し低かったから、もうちょっと今回は問題集を解いてみるつもりだった。それにボーダーラインをキープしないと特待生として通っている分、対象外になる可能性もあるのだし。
 そんなことを頭の隅に置きながら、目の前の問題を解いていく。

 放課後に一緒に勉強しようと言い出したのは冬吾だった。というか、できれば教えて欲しいと言われたのだけれど。まあ恋人の歩先輩も勉学特待生だから彼に教わったのでもいいんじゃないか、と疑問を投げかければ、じゃあ歩も一緒に、というのが冬吾の弁。


「冬吾くん、そこ違うよ。そこはこっち」


 そう言って冬吾の間違いを指摘したのは歩先輩だった。歩先輩を中心に両隣に俺と冬吾が腰掛けていた。結局、歩先輩からも『人に教えるのもいい勉強だし、一年生のときの復習にもなるから』と言われてしまい、三人で放課後勉強会を開くことになった。
 場所をどこにしようか、と話していたところで歩先輩が微笑を浮かべて教えてくれたのだけど。どうやら図書館の多目的ルームのなかには小さめのディスカッションルームもあり、事前申請をしておけばその生徒以外は生徒証による電子ロックを解除できないように設定してもらえるという、何というか図書館の便利な使い方を教えてもらった。あまり広まると悪用されかねないから図書館の常連生徒ぐらいしか知らないらしい。
 ディスカッションルームということもあり、完全防音仕様だし、転校生が入ってくることもない。安全な空間ができあがっている。そのため三人にも集中して課題に取り組むことができていたし、別館の方の自室よりか捗っている気がするから歩先輩には感謝だ。


「悠璃くんはすごいよね。僕が教えること全然ないや」

「そんなことないですよ?応用問題とか引っかけのところはどうしても手が止まりますし……」

「でも、ヒント言うだけですぐ解けちゃうから」

「悠璃は頭良いよなあ。中間でも庶務に次いで二位だったろ」

「うーん、でもちょっと点差があったから詰めたいんだよね」

「負けず嫌いだ!」


 楽しそうに笑う歩先輩に冬吾が同調して確かに、と笑ってみせる。
 そうかな?たぶん、つい中学時代の成績と比べてしまうからだ。ここは所謂進学校だし、レベルも高いから比べるのが間違っているとは思うんだけれど。まあ、前回の反省を踏まえた上で、目標点だけは確実に取りたい。




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