宣戦布告だ! | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

prev / next
[ mokuji / bookmark / main / top ]

8.


『…ねぇ、ワタシ、綺麗?』

知ってる、これ。相当有名で一時期は全国をパニックにまで陥れた都市伝説。

(口裂け女だ…!)

服装はいろいろな噂があるが、共通するの顔の下半分を隠すほどのマスクをしているのと、凶器を持っていること。今、俺からは見えないが、背後に隠した右手に持っていると思う。

で、『ワタシ綺麗?』と聞いてくる。

綺麗じゃないと答えればその場で殺され、綺麗だと答えれば『これでも?』と言いながらマスクを外して裂けた口を見せられ、凶器で同じように口を裂かれる。助かるには、

(助かるには…、…なんだっけ)

忘れた。肝心な部分を忘れた。

真夏なのに冷や汗がドッと溢れる。会う確率が高いとは真木から聞いていたが、いきなりの遭遇。しかも、初めから戦闘能力が半端ない大御所様とこんにちはしてしまった。

買い物袋を持った俺。凶器を持った彼女。

物理3点の頭を振り絞って、かろうじて思い出した解決策は飴だった。たしかべっこう飴だったと思う。べっこう飴があれば助かる。だが、べっこう飴なんか買ってない。

俺はお婆ちゃんっ子だったが、べっこう飴よりも干し柿派だ。干し柿おいしい。

「あ!思い出した!」

簡単な助かる方法があったんだ。

あれだ、整髪料。整形手術を受けた時の執刀医がとある整髪料をつけていたから、その名前を出すと逃げる。…でも、整髪料の名前が思い出せない。現代っ子には馴染みのない響き。

「あれだよ、あれ」

『なぁに?』

「あれだよ、ほら。あれだって。分かるよね、あれ。髪につけるワックスみたいなあれ」

助かりたい。でも、思い出せない。

「あれだよ…!俺持ってる」

その結果のあれあれ詐欺。

親しい者の名前を言わせるおれおれ詐欺とは違って、あれあれ詐欺とは都市伝説の口から苦手な物の名前を言わせようとする勇者な挑戦だ。口裂け女が言ってくれるとは思えない。

なのに、

『ポマード?』

「言った、自分の口で言ったよこの人」

『あら、珍しいのね。最近の子はワックスを使うと思ったのに。僕、ポマード持ってるの?』

「聞き間違いじゃなかった。めちゃくちゃ自分で言ったよ、ポマード。言ったら逃げるどころかご近似さんみたいな態度なに…!?」

しかも、俺のことを『僕』って呼んだ。

[ 23/28 ]
prev / next
[ mokuji / bookmark / main / top ]

座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。