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6.

※真木side

稲荷寿司を社の前に置いた。

小さな社は割と古びている。だが、その前にのんびりと横たわる狐はこの茜色や紺色が入り交じる夕暮れの中でなお、その毛並みを純白に輝かせていた。そして、目元の真っ赤な隈取り。

古来より、白い動物は神の眷属とされてきた。幽霊や都市伝説がいれば神様も勿論いるわけで、その中でもこの神社は小さいながらも本物を祀っていると昔から知っていた。

普通の人には見えない真っ白な狐が、稲荷寿司の匂いを嗅ぎつけて尻尾を揺らす。

だが、供え物があるということは頼みがあると知っているこの賢い狐は、そわそわと尻尾を揺らしながらも俺の言葉を待っていた。

「高い稲荷寿司なんだぞ?」

『もったいぶらずに言えばよい』

ひどく老成した落ち着きのある声。

『小さい頼みならばいつもの100円の稲荷を持ってくるだろうに…。…で、今日はなんの頼みがあって老体のところに参ったんじゃ?』

高級稲荷寿司のフタを開けて匂いを漂わせる。因みに、霜降り肉の値段にはさすがに敵わなかったが、鰻よりかは断然高かった。

「浮遊霊を拾った。だが、」

『ははっ、まっこと異なことを申す童(わらべ)よ。…あれが霊なぞではないとそなたならばとぉっくに知っておろう?』

「…あぁ」

『あれは我ら神の眷属でなければ、怨念や歪(いびつ)から生まれた化物でもなく、されど未練により現世に留まり転生を待つ魂でもない。…あれはそなたと同じ人の子、』

狐が佇まいを正した。

ピンと背筋を伸ばし、目を細めて尾を揺らす。だが、大雑把に見れば凛としていて神々しいかもしれないが、稲荷寿司に釘付けになった目線のせいで全てが台無しになっていた。

『あれは肉体から迷子になっただけじゃ』

「幽体離脱。体はまだ生きている」

『さようぞ。…して、頼みとは?』

じゅるり、と狐のヨダレの音。

もう我慢が効きそうにないと知っていた上で、稲荷寿司を取り上げればキッと睨まれた。可哀想だから匂いだけ嗅がせてやる。だが、余計に強く睨まれた。匂いくらいは堪能させてやっているのに、まったく嫌な狐だと思う。

「若葉の体を守ってほしい」

隙があれば体に潜り込んで支配権を奪おうとするモノから、彼を守ってほしいんだ。

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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。