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5.


なら、家まで持ってくれるのか。

その答えはもちろん否で、真木は解決の後に買ったものを俺に押し付けた。俺は自分で買った食材の山を自分で持っている。

自業自得と言えばそうだし、代金は真木が払ってくれたから、これくらいは頑張るけど。

両手いっぱいの買い物袋を持ってヨロヨロ歩く俺を気にもせず、真木は暢気な散歩のように前を歩いている。だが、なぜかエロ本とお稲荷さんだけは真木が自分で持っていた。

「それ、なんで持ってんの?」

「使うからに決まってんだろ」

「使うって今?エロ本とお稲荷さん?」

「…神社によってく」

と真木が言った時、帰り道を逸れた少しだけ遠くに真っ赤な鳥居が立っているのが見えた。少しだけ古びた鳥居。だが、その朱色はやけに鮮やかで、夕暮れの茜色と同化していた。

鳥居は境目だと言われる。

実体があろうと、今の俺は幽霊であって、だからこそかは分からないが、鳥居を隔てた向こうの雰囲気が違うことを肌で察した。

あそこは駄目だ、真木はよくても俺は入れない。なぜか直感でそれを理解した。

「…俺はここで待ってるから」

何しに行くんだ、とか。

そんなものをお供えするのか、とか。

そんなことは聞けなかった。ただ澄みきった空気、俺にとっては毒にはならないまでも苦手なその空間に近付きたくなくて、足がその場に深く根を張ったように動かなかった。

「あぁ、すぐに戻る」

と言って真木は行ってしまった。

夏の夕暮れ。太陽が沈みそうで沈まない絶妙な時間帯。赤っぽい雲が長く伸びて、陽の光が徐々に弱くなる。先程まで空は綺麗な茜色だったのに、もう淡い紺へと変わりそうだ。

真木の背中はついに見えなくなった。

そんな時、ふと俺の前に女性が現れた。

「っ!?」

ついさっきまで真木の背中を見ていた方角。ずっと先の交差点まで人がいなかったのに、突如としてその女性は現れた。空を見た一瞬の間に、俺のすぐ前に、すぐ近くに現れたのだ。

女性にしては高めの身長。背中を少し越したストレートの黒髪。左手をダラッと力なく垂らし、右手を背後へと隠している。

彼女はマスクをしていた。

顔の下半分を全て覆う大きなマスク。

だが、それでも目や眉できっと素顔が美人であることは見て取れた。焦点の定まらない目で俺を見て、そして、低い声で問われた。

『ワタシ、綺麗?』

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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。