豊かなブロンドの髪。だが、その色は雷の黄金色よりもずっと柔らかくて優しいかった。
瞳は女性にしては切れ長で、形のいい薄い唇から漏れる声も低めだ。しなやかな手足には程よく筋肉がついていて、指は女性特有の長く繊細なものだったが、剣だこが付いていた。
銀色の鎧。背中には弓矢があり、腰には剣。
彼女、アルテミスは長い足を持て余すように歩き、同時に振動に鎧が鳴るのが聞こえた。
女性としての美貌と戦士としての勇ましさを併せ持つ始祖。光の女王、アルテミス。
彼女はベッドに腰かけた私の目の前まで歩いてくると、にっこりと妖艶に口角を吊り上げた。真っ赤な唇が愉快げに弧を描く。
「それにしても、坊や、そんな乱れた服装で私を呼ぶなんて随分と積極的に誘うのね?」
「っ、」
慌てて服を整えれば、アルテミスはまた笑う。ひどく楽しそうな表情にからかわれたのだと知った。それでもきちんと服を整えた。
「なんで召喚に応じたんだい?」
「あら、呼んでおいてそれはないわよ」
「…私は君と契約するつもりではなくて、召喚して悪いけど、出てくるとも思わなくて…」
「奇遇ね、私も契約するつもりはないのよ?」
目が丸まっていく自覚がある。
呼んでおいて契約拒否というのは私の方が悪いのだが、契約をするつもりがないのなら、彼女は何を思って現れたのだろうか。
「私は苦情を言いに来たの」
ドン、と彼女はベッドの足を蹴った。
その力は到底女性とは思えなくて、ベッドが震える。それは座っている私にまで伝わってきた。彼女は私を見下ろし至極迷惑そうな、だが、愉快そうな色が若干滲む表情を浮かべた。
「あなた達の痴話喧嘩に聖獣達を巻き込むのはやめてちょうだい。迷惑しているわ」
「痴話喧嘩!?」
「えぇ。気付いてないの?あなたの全身にドラゴンの魔力が絡み付いていて、マーキングみたい。そんな状態で召喚を繰り返して、雷の王の獲物相手に聖獣達が応えると思うかしら?」
「そんなわけはない。私達は契約を切った」
「契約を破棄したとしてもあなたにご執心ってことよ。本気で分かっていないの?」
はぁ…、と彼女が溜め息をついた。
「契約を切ったのに契約主にはマーキング。契約をするつもりがないのに召喚。…あなた達には呆れてものも言えなくなるわ」
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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。