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12.

「本当に?彼が私に魔力を?」

「嘘を言ってどうするのよ。聖獣達の苦情を抑えてきたけれど、私ももう限界」

クシャリ、と彼女が手で髪を乱した。

「召喚から雷の王の牽制が伝わってきて怖い、って救助要請が殺到。雷本人に抗議はできなくて、炎は不在、風は関与しないって言ってるし、私と氷と闇が必死に対応したのよ?」

牽制、というのならドラゴンはやはり私に契約してほしくないのだろう。だが、本人に再契約の意志はないと思う。再会して時間は経っていないが、契約を口にする様子はなかった。

なら、どういうつもりで…。

考えを巡らせて、だが、答えが分からなくて、そんな私に彼女が呆れていた。

「とりあえず召喚はもうやめなさい」

「分かった」

「いい子ね」

アルテミスが私の頭を撫でた。長い指が髪を梳く。だが、その繊細な指先が首周りに来て、実は何かを探していることには気付かなかった。

そして、撫でていたのはほんの一瞬。彼女の指先が離れていく頃に、何かの細い糸を絡めていたのは私には見えない。指先を眺めてクスッと笑った彼女に、首を傾げるしかなかった。

「でも、自覚がないのは厄介ね」

「自覚ならあるさ。私は身代わりだ」

「ほら、やっぱりないわ。雷が求愛しているのは初代の坊やじゃなくてあなたよ?」

「求愛って…」

「ったく、何千年も生きてきたのに告白の一つもできやしないなんて…。王の中では若いって言ってもこれには困り果てたものだわ」

アルテミスの言葉を整理する。

ドラゴンは私に魔力を纏わせ、これにより聖獣達が怯えて召喚は全て失敗。今回は迷惑に思った彼女が文句を言いに来て契約はなし。

ドラゴンが好きなのは初代王ではなく私で、つまり、私は身代わりなどではなく彼が口にできなかっただけで、彼は私の召喚や契約を故意に妨害してきた。威嚇、と彼女は言ったのだから。

だが、

「私は初代に生き写しだ」

「そんなのきっかけに過ぎないわ」

「…なら、どうして私と契約しない?」

心に引っかかった疑問。

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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。