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9.

「私は身代わりにはならないと言ったはずだ。私は、誰かの代わりに抱かれたくない…!!」

「誰かの代わりだなんて、そんなわけ」

パチンッ、と音が出るほど強くドラゴンの手を叩き落とした。痛みにか、それとも私の言葉にか彼がひどく顔を顰めるのが見えた。

その表情は本当に苦しそうで、見ている私まで泣きそうだ。誰かの身代わりにされた被害者は私なのに、どうして感化されてこんなにも苦しい思いをしなければならないんだろう。

苦しげな表情のまま彼は沈黙した。

「もうやめてくれ」

静かな声。

だが、本物の拒絶はきちんと彼に届いたようで、彼は私の上から引いていく。私の衣服を整えてくれるのは彼の優しさなのに、それに耐えられない私はわざと寝返りを打った。

私の衣服がドラゴンの手から離れ、沈黙が降りる。拒絶したのは他でもない私なのに心臓が苦しくて、ひどく惨めに感じる。

…拒絶したのは、私なのに。

「一人にしてくれないか」

「っ、折角君をさらってきたのに?」

「頼むから」

少しだけ沈黙が続いて、彼の気配が消えた。

その瞬間、月の光に照らされて趣があった部屋が急に廃れたように感じて、月の光はただ蒼白く冷たくなった。夜がいきなり寒さを増して、不安も寂しさも急速に心に募っていく。

部屋が広くて落ち着かない。いや、城の自室より随分と狭いのに、嫌に広かった。

(彼はカイスティンを愛しているんだ)

だから、私と契約を切った。

それに、手袋だって外そうとしない。

結局、最初から最後まで身代わりにされたのであって、私を見てくれたことはない。

「私にトドメでも刺しに来たとしか…、」

心が弱りきっている時に。

この時、私は本当に寂しかったんだと思う。寂しくて寂しくて正常な判断ができなくなって、とりあえず寂しさを埋めるべく誰かと話をしたいと思った。こんな夜中に森の奥まで来てくれる人がいないなら、適当な聖獣で構わない。

ドラゴンは私に想いを寄せているわけではないし、私達は契約をしているわけでもない。

なら、違反にはならないはずだ。

(何かの聖獣を召喚してしまおうか)

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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。