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8.

ベッドに強く押し倒された。

かつては上物だったベッドも歳月により劣化し、二人分の体重にスプリングが悲鳴を挙げる。だが、その高い音が気にならないほど目の前の彼は綺麗で、彼だけに集中してしまう。

ドラゴンの手は私の服を次々に脱がせていく。ボタンが外れて素肌が顕になっていくのを見ながら、彼と温もりを共有できるのは嬉しいのに、それでも口が素直になってくれない。

「いいのかい、私は人の夫だけど」

「だった、だろう?」

「あぁ、…逃げられた」

「いや、君から捨ててやったのさ」

ちゅう、と彼が首筋に吸い付いてくる。

抵抗もせずに受け入れていれば、刺すような小さな痛みを感じた。跡を残された、この場所ならまだ隠せる、だなんて妙なことを考えた。

「エレナは、」

「それ以上あの女のことを言うとひどく犯すからね?言っておくけど、脅しじゃない」

「っ、どうしたんだ。私に縁談が来た時は君だってエレナを気に入っていたじゃないか。淑やかな姫で、悪くない縁談だって、ン、」

首筋にひときわ鋭い痛み。

噛まれた、と分かった途端に鉄錆びの匂いが鼻につく。黄金色の瞳は一瞬で不機嫌になって、責めるように私を睨んでいた。

「状況が変わったのさ。僕だって身を引こうと思った。…だけど、今の君なら僕が我慢する必要はないし、奪っても構わないだろう?」

「我慢…?」

我慢、とはなんだろう。

まるで私が好きだったかのような言い方。

いや、実際に私が好きだったのだろう。その愛情の行く先は私自身の中身ではなく、カイスティンに生き写しの見た目だったが。それで他人の名前を口にしたから嫉妬したのだろうか。

体をまさぐる指先に心が急速に冷えていく気がした。鎖骨を滑っていく柔らかい唇にも、素肌を擽る黄金色の髪にも、愛しさを込めて触れてくる指先にも、心は痛みしか感じない。

再会した時の嬉しさが消えていく。

「嫉妬しているのかい?」

「当たり前だろう」

「…なら、私も嫉妬していると言ったら?」

「え?…カルナダ?」

ほら、私を脱がせるばかりで、君は服を乱すどころか白手袋すら脱いでくれない。

やはり私はカイスティンの身代わりでしかなく、そんな代替品には素手で触りたくないのだろうか。…こんな、私なんか。

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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。