23.
限界まで見開かれた綺麗な目。初めて余裕を崩してやったと思うと気分がいい。
完全に意表を突けたらしく、逃げ場を奪おうと後頭部を押さえた手の意味もないほど硬直していた。ぽかんして唇が薄く開かれているんだから、舌を入れずに耐えられるわけがない。
甘い口内に舌を潜り込ませる。この時になってやっと我に返ったらしく、ピクリと体が跳ねた。だが、既に先手を打って押さえている。
「…ン、おま、っ、」
言葉も、吐息も奪う。
逃げる舌を追いかけて絡めて、唇を甘噛みして吸って、温かい口内を味わって、ロゼと同額のアンティを支払うべきだから遠慮なく貪った。
そして、開放してやる頃にはお互いの唇が濡れていた。自分の唇を舐めてからまた触れるだけのキスを落とす。まだ呆然としているコウを見据えて、クッ、と喉の奥で笑った。
「今日はこれで勘弁してやるよ」
これが恋の始まりだった。
ホストだから厄介な相手だとは思っていた。どれだけ本気の愛情を囁こうと売り物の愛情で返されるんだろう、と覚悟もしていた。
それでも、諦めるつもりは全くなくて、通えば通うほど溺れた俺は最初から完敗していたんだろう。
だが、まさか一年後の試験でコウが敵になりターゲットになることも、実は本職の方の先輩だとも夢にも思っていなかった。
その後に正真正銘の恋人になれることも。
(Homeopathy -The first bet- 終)
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