22.
イカサマがバレて狼狽えるそいつを、コウを引き寄せた。突然の出来事に反応できなかったのか、それとも罪悪感で俺の腕に従っただけかは分からないが、腕の中に収まった体を抱き締める。
ぎゅ、と痛みを与えない程度に、だが、抜け出せないほどに強くきつく拘束する。
強張った体は抵抗こそしなかったものの、リラックスさせようと後ろ首を撫でても強張ったまま。つい苦笑いが溢れる。
「…慧?」
戸惑った声。それを無視して軽く、だが、抵抗できないように確かに押さえつけながらコウの耳に息を吹きかけた。擽ったそうに逃げる頭にまた笑ってしまって、首筋に擦り寄った。
ちゅ、と鎖骨を啄む。跡はまだ残さない。そんなに急げば嫌われてしまうかもしれない。
「俺の負けだ、コウ」
ポーカーも、ターゲットの心を掴むことも。
「だが、」
少し下の位置から至近距離で見上げる。
店内の暗さでさらに濃く染まったダークブラウンの目は、戸惑いながら俺を見ていた。そこに映った自分はこの上なく楽しそうな表情をしていたが。
柔らかい肌にもう一度唇を押し付けて楽しみ、流れるような穏やかな音楽を聞きながらコウの後頭部に手を添える。俺は水遊びに慣れない初な坊ちゃんだと思われているかもしれないが、油断していると痛い目を見ると教えてやろう。
「アンティは貰うぞ」
そして、その唇に噛みついた。
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