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2.


そして、今日は約束の金曜日だった。

「コウ、乗れよ」

午後九時、駅前の広場は人で溢れかえっていて、端の道にそっと車が停められる。高級感のあるブラックの車の運転席に清宮を見付けて歩み寄ると、助手席のドアを開けてくれた。

ドライブの約束をしてしまったが、店がアフターサービスを禁止しているから、スタッフ達に見られないように店からある程度離れた広場を待ち合わせの場所に選んだ。

店には今日は休みだと言ってある。

「二人っきりでいけねぇことしてるみたいだ」

「…お前が他の要求にしてくれたらなぁ」

「店以外にも行きたいんだよ」

乗り込むと、車が走り出す。

広場に来る前まで店にいた俺はスーツだが、仕事終わりの清宮は私服に着替えている。威圧感は引っ込められていて、代わりにいつもは見えない年相応の若さが現れていた。

俺より一つ年下の清宮は社長を継ぐ気はないと言っても、御曹司という立場だから若さで侮られないように肩に力を入れて生きてきたんだろう。店に通い始めてから一年、スーツを着こなした清宮は常にそんな雰囲気だった。

だが、それがラフな格好になっただけで、雰囲気も随分と柔らかくなる。

(なのに、色気は健在だから、…困る)

ハンドルを握る指の長い綺麗な手。襟の開いた服から見える色っぽい鎖骨。うなじの色白さを強調する毛先の跳ねた赤っぽいブラウンの猫っ毛。

運転する時にかけるだろう眼鏡は初めて見るもので、その向こうの色素の薄い目がまっすぐ進行方向を見ているのをいいことに、俺は清宮の珍しい姿をずっと眺め続けていた。

目が逸らせなかったんだと思う。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。