真夜中のドライブ
また一週間がすぎてしまった。
試験は残すところ一週間と少しだ。
そして、やはり進展はなかった。
店の情報を盗もうとした痕跡はあるが、俺が設定したセキュリティを破れないらしい。破れたとしても、残念ながらそこに情報はない。
TCCE運営側が俺に渡した偽リストは三つ。麻薬売買の顧客リスト、拳銃密輸のルート、売春被害者の女性のリストだ。規定により、三つとも試験監督が所持し、補佐に任せてはならない。
俺はこの三つを別々の場所へと隠した。
麻薬売買の顧客リストはクラブの二階の部屋のパソコンに。一応パソコンにはパスワードを設定しているが、このセキュリティは特にいじっておらず、普通のセキュリティを使用している。
つまり、プログラムを理解して組み替えることが出来れば、パスワードなしで入れる。
試験終了まで約一週間。最高レベルのセキュリティに設定するのはあまりにもひどい、という話ではなく、ただ単に強引に奪いに来たらこのセキュリティを破れるかどうかを知りたかった。
二つ目の拳銃密輸ルートの情報は、USBメモリーに入れて持ち歩いている。たいていはジャケットの内ポケットに入っている。
最後の売春被害者の女性のリストは印刷して、二階の部屋のブラックリストファイルに紛れ込ませた。開いてすぐの一枚目、俺のお気に入りの女優さんの後ろだ。
(…まぁ、これはちょっとした悪戯だが、)
もちろん、奪われる気はない。
因みに、この偽リストは運営本部から極秘メールで送られてきた。
本来であれば、ネットに足を残した情報は媒体となったパソコンの記録を消去しても、再構成が可能だ。相当なプログラミングの腕が必要になるが。一度生まれたデータを消すのは難しい。
今回は情報が移動してきた足跡すら消すように俺が念入りに消滅させた。再構成は不可能だ。
つまり、彼らが狙っている情報はパソコン、USBメモリー、ファイルにしか存在しない。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。