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11.


目的地は少し離れた廃ビルだった。

ここで取り引きを行なうと思ってほしい。

表はあんなに人が多くて騒がしいのに、少し裏路地に入っただけで暗くて、自分の足音が響くほど暗い。窓の外から見た限り、もちろん、廃ビルの中に灯りなんてものはなかった。

「発信機ってどこォ?」

尋斗は眉を寄せながら探していたが、少し頭を冷やして考えると俺には思い当たる節があった。車からアタッシュケースを取り出す。それを持って離れた場所へと向かった。

「蓮、発信機は?」

『車から離れましたね、今』

「やっぱり!」

車には接触がなかった。だとしたら、可能性はこのアタッシュケースだけだ。

(榊がぶつかったあの一瞬だ!)

あの一瞬、アタッシュケースは開かれなかった。だから、外だ。ケースの外を見回す。

「あった!」

ケースにくっついたチューインガム。その中に隠れるようにして、ピカピカと赤い光を断続的に放っている発信機があった。それをティッシュで包んで引きはがして、ゴミ箱に投げ入れた。

「あいつ、俺のアタッシュケースにチューインガムって、…いい度胸してやがるよな」

視界の端で尋斗が震えた気がした。

とりあえず、ゴミ箱の中で信号を発しつづける発信機があいつらを呼び寄せるにはまだ時間がかかるだろうから、のんびりしておくことにした。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。