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「#エロ」のBL小説を読む
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9.


発信機を嫌うのには理由がある。

後ろからバイクで追いかけてくるなら常に一定間隔を保つ。つまり、尾行というものは相手の行き先に気付かれずに一緒に行きたいだけで、相手に攻撃の意思もなく主導権はこちらにある。

だが、発信機をつけられると話は変わる。

発信機を確認することにより、路面を平面データにしてパソコン画面で見れるのだ。つまり、言ってしまえば俯瞰が可能になるのだ。

自分が獲物を追いかけることと、第三者がチェスや将棋のように現場を俯瞰しながら冷静に指示を出すことは大きく違う。回り込みや挟み撃ちができるようになる。それが怖い。

衛星なんてものはひよっこには使えないとしても、発信機だって警戒するべきだ。

『榊さんは携帯もパソコンも見てませんが、一応振りきる用意をしますね』

「頼む」

今は普通の道路を走っているから派手に仕掛けてはこないだろうが、それでも急に飛び出してきたりするかもしれない。相手はバックミラーに映らない位置を維持し、二人が一人になって、もう一人が回ってきても気付きにくい。

『彼らは同じ間隔を保ってます。次から数えて三つ目の交差点を超えたら注意してください。青信号を3秒短くしました』

「ありがとう」

『了解だよォ!』

あいつらだって信号の長さを計算しているだろう。

できるだけ遠く、できるだけ気付かれないように、だが、俺達が振りきれない距離。

青信号が短くなったというのは赤信号に早く変わるということだ。通常より早くストップさせられる。3秒というのは普通なら短いが、走っている車やバイクにとっては相当な距離になる。そこにさらに30mの差が加われば…、

(充分だ)

振りきれる。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。