7.
アタッシュケースを持ち、トイレから出る。何もなかった態度でショッピングセンターを出て、バイクをとめた場所に帰ってきた。
『コウ、車に戻ったよ』
「分かった。すぐに行く」
後ろに尾行している奴が一人いるのを確認して、ヘルメットを被った。またエンジンをかけて計画で決めていた駐車スペースに向かう。
見慣れたブラックの車に近付けば、待ち構えていたように運転席のドアが開いた。アタッシュケースを尋斗に渡した瞬間、ぱち、とそれはそれは悪戯っぽいウィンクが飛んできた。
どうやら尋斗は死角となる柱を上手く利用して、尾行から見えないように車に戻れたらしい。運転席。ここからはシステムは遠隔操作から通常、ドライバーは蓮から尋斗に変わる。
バイクと車が同時に走り出した。
『レンレン、第一関門クリアだよォ』
『分かりました』
これでひとまずは騙せたと思う。
オーナーであるコウは今は二階で休んでいる。
車には最初から二人乗っていた。オーナーから渡された拳銃がきちんとした本物かどうか確かめるために、一人がショッピングセンターのトイレで確認した。本物だった拳銃は車に戻され、最初から駐輪場に用意していたバイクで走り始めた。
「蓮、時間は?」
『22時29分です』
仕掛けが動くまであと39分。その時、右耳からコール音がした。これは部屋の内線のコール音で、二回から四回のコール音をランダムで響かせた後に自動で繋がるように設定している。
『もしもし、コウさん?起きてますか?』
榊だ。
「あぁ、起きている」
『厨房の手伝いはもうよろしいそうで…』
「ありがとう。じゃあ、少し休んで表を掃いてくれ。急がないから休んでからな?」
『ありがとうございます。失礼します』
仕掛けが動くまであと39分。22時50分まではあと21分。表の掃き掃除は15分くらいで終わるから、5分休憩したくらいがちょうどいい。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。