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4.


因みに、尋斗は車の助手席から降り、また助手席に戻ったわけだが、運転席には誰もいない。

あの車は普通の運転と遠隔操作の運転が選べる仕様になっており、今はクラブの警備室にいる蓮が運転している。車の中と外を写す複数のカメラを調節し、その映像を見て運転するのだ。

あの車には、少なくても二人乗っていると思わせるためだ。そのため、外から中が見えないように車のガラスを加工した。フロントだけは加工していないが、尾行する彼らは正面には来ないと信じたい。

そして、何食わぬ顔で俺は店に戻った。

しばらくは適当に働いて、だが、十五分くらいした時に榊を見付けて言った。

「あー、榊、俺、頭が痛いから二階で休んでるな。今の仕事終わったら内線で教えてくれ。次の指示を出すからよろしくな」

「はい。分かりました。休んでてください」

先程わざとふらついて見せたのは、この嘘を信じ込ませやすくするためでもある。

榊に見送られながら二階に上がった。

何かと言って榊は優しい、…というか、甘いと思う。これが普段なら頭が痛いと言っておけば、榊は俺には電話しない。自分でやるべきことを見付けるか、誰か体調のいい人に聞いてくれるのだ。

だが、今日、取り引きが行われる大事な日に俺がきちんと店にいると確認しなければならない。

(榊は必ず内線で連絡してくる)

部屋に戻った俺は、急いで着替えた。スーツじゃない普段着だ。バイクの鍵をポケットに入れる。

左右の耳に黒曜石のピアスをつける。これは見た目こそピアスだが、実際はピアス型通信機だ。左耳のものは尋斗と蓮と三人で繋がっており、右耳のものはこの部屋の内線の性格を移した。

性格を移した、は奇異に聞こえるかもしれない。

簡単に言えば部屋の内線を一時中断し、無線の電波状に変換し、このピアスに電波をキャッチさせる。店の内線電話はこのピアスに繋がるのだ。

これで榊に対応し、騙す。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。