2.
こちら側でこの計画に参加するのは俺達三人。
それに対し、向こうも三人で来るだろう。
だが、不思議なことに立花は休みをとったが、榊は通常出勤だ。俺が許可しなかったのではなく、休みたいとすら口に出さなかった。二人が協力関係だと気付かせたくなかったんだろう。
とりあえず、
(作戦開始だ)
二階の奥の部屋、誰もいないのを確認してアタッシュケースの中身を最終確認する。
二丁の拳銃。モデルは最新型だ。
その気はそうそうないが、万が一奪われた場合に疑いを持たれないために、この拳銃は二丁とも本物だ。何も改造していない殺傷力のある武器。だが、もちろん、銃弾は込められていない。
状態を確認して、アタッシュケースを閉じた。
そして、部屋を出て一階に降りる。
「オーナー、こんばんは」
「あぁ、榊か。こんばんは」
一階に出て、すぐに榊に会った。いつもより少し険しい眼差しは、俺を見た後すぐに右手に持つ黒色のアタッシュケースに注がれた。本当にそれらしい雰囲気をしているケースだと自分でも思う。
たぶん、榊は俺をマークしようとしていると思う。
メールでは俺は行かず、他の誰かを向かわせると言った。それはつまり、俺はクラブに残るということ。その俺をこいつは監視したいんだ。
「…っ、おっと!」
「大丈夫ですか、コウさん!?」
榊の目の前でわざとよろめいてみる。榊は俺を支えようと手を伸ばし、その指先が若干アタッシュケースに触れた。そこでわざと分かりやすめにアタッシュケースを榊から遠ざけた。
この中に拳銃がある、とほのめかすために。
「悪い、悪い、大丈夫だ」
つくろうように笑い、榊の眼差しに何も言わず目の前を通りすぎては、ひしひしと背中に突き刺さる強い視線を感じながら店の裏口へと向かった。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。