8.
「はぁ、はぁ、」
「息は鼻でしろよ」
知ってる。でも、お前相手じゃ余裕がない。
だなんて、絶対に言ってやらない。
乱れた息を整えていれば、小馬鹿にしたような言葉を言った清宮は満更でもなさそうに笑いながら、ペロリと赤い舌で唇を舐めた。
結局、受験者かどうかは分からない。清宮が思う通りにキスされてしまったのかもしれないし、動けなかった俺に痺れを切らしてキスしたのかもしれない。色気に呑まれた俺のミスだ。
(だからお前が苦手なんだよ)
何も読めない。
「じゃあ、命令な。今度ドライブに付き合え」
「ドライブぅ?」
「あぁ、俺が運転するから」
これまた読めない命令だ。
何か答えさせて遠回しに探りを入れてくるのかと思いきや、ドライブに誘うって…。しかも、ドライブに何か仕掛けるのか、それとも、本当にただ単にドライブなのか、付き合うまで分からない。
「当店はアフターサービスしていなくてだな…」
「約束破んのか?」
「…はぁ。仕方ないな。特別だぞ」
「やりぃ!」
どこかで清宮に甘い俺がいる。
俺の店は本当にアフターサービス禁止の珍しいクラブで、それは客の中に情報屋がいる場合があり、俺がキャストの安全と万が一の危険性を考慮した結果、設定したルールだ。
だが、本職の方の都合でも清宮が受験者かどうかを早く知る必要がある。それに、俺なら大丈夫。と、誘いを受け入れたことへ言い訳してみる。
「他の奴らには内緒にしろよ?」
「分かってる」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。