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4.


「お前っていつもそうだよな。いつも鬱陶しそうに俺をあしらうくせに、根本的なとこは気を遣ってる。上着取りに行きやぁいいのに」

「客を一人にしたくないんだ」

「俺を一人にしたくないって言わねぇの?」

少し清宮が距離を縮める。ソファーの上で、しかももともとあまり距離は空いてなかったから、それだけで体が密着した。骨張った男らしい手が、頬を撫でてから俺の毛先で遊ぶ。

「…慧を一人にしたくなかった」

「何だよ、その求められから仕方なく言いましたって声色。…ジャケットなくて俺も寒いからその責任は取れよ、コウ」

「寒いなら返す!」

「お前が寒そうにしてんの見たくねぇの。それに、お前にくっついてたら温けぇから」

腰を抱かれて、至近距離で見つめられて、柄にもなく耳が熱くなっていく。

この男の表情も態度も声も、…全てが毒だ。

副業だとしてもホストとして四年も働いていた俺は、ある程度プロだと思っている。なのに、この男にはついていけなくて、振り回されて、余裕も主導権も奪われてしまう時がある。

だから、清宮が苦手だった。

だが、結局、清宮の接待を他のキャスト押し付けずに一年以上も指名に応じ続けていたあたり、俺もこいつの態度に流されていたんだろう。

来週も来るという約束はないくせに、毎週欠かさず清宮は来てくれる。来週の金曜日もきっと俺は清宮を待つのだろう。そして、嫌そうな表情をしていつも通りに接客に入ると思う。

知らないうちに主導権を握られることが嫌で、慣れなくて、俺は清宮を疑っているのかもしれない。俺が振り回されることなんてなかなかないから。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。