2.
「で、どうですか、コウさん!この制服、格好いいでしょ!似合ってます?似合ってます?」
「うん。似合ってる」
徐ろにソファーから立ち上がると、俺に見せようとその場でクルクルと回転する。
三年前、つまり俺が通過した翌年にTCCEを合格した蓮は、あの時はまだそんなに場数を踏んでいなくて危なっかしい感じがしていたが、今では落ち着いた雰囲気を醸し出すようになった。
年齢では蓮の方が三つ年上だが、やはり試験に合格した者から先輩となるこの業界では、初めは先輩と呼ばれた。そこを必死に説得して、妥協してもらった結果、さん付けで落ち着いた。
だが、一目で水商売をしていると分かる俺とは真逆に、蓮は若く見られがちだ。それこそ二十歳を越したばかりだと思われるだろう。
実際に、今も犬なら勢いよく尻尾を振るほど喜びながら、窓ガラスに移る制服姿を見ている。
「軍服、っていうかこういう警備員の制服でも構わないんですが、昔から憧れだったんですよ!」
そう言って、無邪気に笑う。
清潔感が保たれたきめ細やかな肌に、ダークブラウンに染められた髪。垂れた目が細められるとさらに人懐っこさが強調される好青年で、制服を脱いだ休日はきっと流行りに敏感でお洒落だろう。
蓮は香水を付けないが、もしも香りをまとわせるなら柔らかい石鹸の香りが似合うと思う。
誰も彼が裏社会の住人だとは思わない。だが、蓮は裏でパソコンをいじるだけではなく潜入や交渉などもするため、その見た目に警戒心を忘れると、コロッと騙されて情報を持ち逃げされる。それこそ持ち逃げされたとさえ気付かずに。
今だって制服姿が見事に板についていた。
「…それにしても、ホストクラブに警備員がいるなんてちょっと意外ですね」
「うちはこれでもそこそこ高級なんだよ」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。