（観察眼は合格）

オーナーとしての仕事を至って真面目にこなしつつ、榊を観察してみる。

清宮と違ってあまりはっきりしていないが、シャツをまくった腕や体のラインから判断するに、それなりに鍛えているようだ。

「榊、お前、引き締まった体だよな。顔も綺麗だし、かなりモテるだろ？」

「そんなことは…っ。高校時代にバスケ部にいたんです。大学でもサークルで、」

「そうか。格好いいな」

「なっ！？」

嘘だ。バスケの筋肉の付き方じゃない。

スポーツにはそれぞれの特徴がある。その特徴によって筋肉の付き方や体格も違ってくる。例えば、逆三角形型の体は水泳選手の特徴であり、脂肪が落ちて全体的に細い体は長距離マラソン選手の特徴である。

バスケはボールを投げたり受け取ったりするから一番発達しているのは腕の筋肉だが、榊はしなやかな筋肉をバランスよくにつけている。

どちらかと言えば、

（体術。それも実戦に特化したものだ）

反射的に手がホルスターに向くほど銃の扱いに慣れており、とても冷たい殺気を出す。さらに、よく鍛え上げられた戦闘用の体。演技は下手だが、その下手さそのものが狙って行われた演技かもしれないし、観察眼は上々。

初々しくて微笑ましい後輩だと思っていたが、話はそう簡単にはいかないようだ。

（俺は子羊の皮を被った狼を自ら懐に入れたってわけ。うわ、最悪）

それでも野放しにするよりはいい。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。