3.
「用がある時は警備員に言って、ドアの鍵を開けてもらえ。用なんて少ないと思うが」
「分かりました」
一階の奥の警備室から少し進んだ先にある階段を上がって、二階にある部屋に入る。
この階段の一階部分にはドアがあって、俺が持っているカードキーを使うか、警備室にいる警備員に言って開けてもらうしかない。
警備室で操作すればドアのロックは十分間解除される。二階から降りる時にロックされているか場合も同じで、内側からカードキーを使うか、もしくは俺が警備室に電話して伝えるかだ。
これは受験者が来ると分かって、雰囲気を出すために昨日慌ててセキュリティ設定を変えたのであって、一昨日まではドアは自由に開け閉めできた。
だが、この部屋に用がある奴はいないし、かつてこの部屋に来た人もいないから、皆知らない。
(時間制限って情報屋のロマンだ!)
そして、ここでちょっとした悪戯。
部屋のドアを開ける。俺が入って、榊が入ってくる直前、横にあった銃をさっと素早く手に取って構え、榊に標準を合わせてみた。もちろん、構えは意識してアマチュア仕様だ。
「動くな!!」
この時、榊に怯える気配はなかった。
てっきり狼狽えるか怯えるかと思ったが、むしろ逆で、一瞬でしかないがゾクッとした殺気を出した。目が比べようもなく鋭くなったのだ。そして、反射的に右手を右腰あたりに下げたのが見えた。
(は、そこが甘いんだよ)
右腰、銃のホルスターの主な置き場の一つだ。
今回も先程と同じ防衛本能の話になるが、人間は恐怖を感じた場合、無意識に腕を胸の前に置く。心臓などの大事な臓器を守るためだ。
なのに、榊の動きは真逆。右腰。十中八九、反射的に銃を抜こうとしたんだろう。そして、銃を携帯していないのを思い出し、その目が見開かれた。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。