2.
「まずは二階にある部屋、…俺が書類仕事をしたりする部屋だが、そこの掃除を頼む」
「は、はい!」
そんないきなりラスボスに会うような緊張した表情はしなくていいのに。
というか、ラスボス設定は俺なのに。
因みに、清宮は指名時間が切れて帰った。
駄々をこねて延長したがっていたが、榊への説明があると、さらに帰らなければお前に弁償させると脅せば大人しく帰っていった。
結局、清宮がどうかはまだ分からない。
榊を手伝っていたような気もするが、それだけで確信するには弱すぎる。
だが、気になることがある。ドン・ペリニヨンのエノテーク・プラチナだ。いくら清宮の羽振りがいいといっても、あそこまでの最上級シャンパンが出てきたのは今日が初めてだ。
あの男はいつも俺を口説いてくるが、その誠意を表すにしてもシャトーで充分な値段だ。
どうして今日に限ってプラチナが出てきたのか。
(タイミングがよすぎないか?)
わざと弁償できないようにするために。
榊に割らせるために頼んだように感じた。
清宮がエノテーク・プラチナを入れたのは俺が誘導したからだと思っている。だが、あいつがまず俺を誘導して、いつもより高い酒を頼まなければならない言葉を出させて、高い酒を頼む違和感をカムフラージュした可能性は?
しかも、あの羽振りのよすぎる男が、部下が割ったにも関わらず責任を取らず、それとなく弁償を部下にさせようとした。
榊の潜入を手伝った?
(…それは、考えすぎだろうな)
観察は必要だが、先入観はいけない。
疑い、騙すのが本質であるこのゲームで先入観に囚われるのは致命的だ。
とりあえず、清宮については決定的な根拠が掴めるまで判断を保留しておこう。だが、それでも充分警戒しておかなければならない。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。