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後輩のからかい方


「へぇ、じゃあ榊は今年大学卒業したばかりなのか。若いのに秘書だなんてよくやるな」

「そんな…。コウさんこそお若いですね」

「俺は高校卒業してすぐにクラブ開いたからな。今は二十二、同い年か?」

「同い年ですよ!親近感湧きます!それにしても高校卒業してすぐって…」

これは嘘じゃない。

普通に考えてみれば不可能だが、情報屋のネットワークを使ったり、今まで貯めた資金を使ったら結構すんなりと店を持てた。

だが、それを知らないこいつは、バックにヤバい組織があると考えているだろう。強張った表情筋を見ると、楽しくてクスッと笑った。

『榊 諒太(さかき・りょうた)』

彼の名刺にちらりと視線を落とす。

書かれているのは当たり障りのない情報ばかりだ。電話番号もメールアドレスも本物なんだろうが、彼が使ってるうちの一つに違いない。

名刺を交換したのはついさっきで、俺の名刺を食い入るように見詰める彼に微笑ましくなった。だが、本当に申し訳ない気持ちになるが、俺が渡したのはホストとしての名刺で、店の住所と電話と源氏名しか書いてない。

渡していないのと同じで、必要な情報は一つもないし、書いてある情報は既に入手済みだろう。俺の名字さえ書いていないそれに、コウと呼ぶしかない。

「お客様には接触しなくていい。お前には雑用を頼みたいんだが、構わないな?」

「…はい」

聞きようによれば、客の中に関係者がいるようなニュアンスにしてみる。瞬時に反応した榊に遊び心がむくむくと沸き上がった。

(可愛い。可愛くて仕方ない)

確かに同い年だが、この業界では年よりも経験の年数が重視される。だから、俺は確かにこいつの先輩で、この先輩は初々しい後輩をいじりたくていじりたくてうずうずしている。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。