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5.


これ以上いじめるつもりはなかった。

それに、見ている俺が苦しくなるような表情に心が痛む。いつもの自信は跡形もなく消えていて、残ったのは年下の後輩の悲しそうな顔。

いい加減安心させてやろうと、イヤホンは外して携帯をポケットに入れてから、自ら清宮の背中に腕を回して抱きついた。息を呑む音がしたが、離してなんかやらないから。

「もう信じてんだよ」

ぎゅ、と清宮の腕に力がこもる。

「マジで?嘘じゃねぇよな?」

清宮の色素の薄い目が揺れる。

ゆらゆらと不安そうにするから、俺も腕に力を入れて微笑んで見せた。真夏にピタリと密着する体温は少し熱くても心地よかった。

「今度はお前が俺を信じないか?」

「だって、こんな、呆気なく、」

「呆気なく、なぁ?…言っておくが、俺も悩んで苦しんだ。お前を好きになって、本気だったから抱かれて、…それが全部嘘だったって分かった時は悲しくて思いっきり泣いたな」

「ッ、いつ分かったんだ?」

清宮の首筋に擦り寄る。肌まで重ねたのに緊張したように体を強張らせて、だが、それでも、清宮は俺を離そうとはしなかった。

ドクン、ドクン、と聞こえる鼓動はきっと俺自身のものなんだろうが、通常より速いそれが伝わりそうなほど体が密着しているから、清宮に聞こえていたらと思うと恥ずかしくなる。

「次の日だ。USBに盗んだ跡があった」

「そんなに早く…」

「だから、最後の日はお前のハニートラップでも失敗することがあるって教えてやろうって、何発か思いっきり殴ってやりたかったんだが、」

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。