4.
『確かにデータを奪わねぇとって思ってた!だが、…俺はッ!!…信じられねぇかもしれねぇけど…、俺は、お前を愛してるんだ、本気で』
信じるよ。
ずっと待っていた一言を得られて、頬が緩む。ここに清宮はいなくて、誰も見ていないのについ手で覆って口元を隠してしまった。
『ずっと惹かれてた。好きだ』
だろうな。じゃないと、女に不自由しそうにないお前が一年も通い続けるわけがない。
波の音も、風の音も、外界から聞こえる全ての音が消えて、ただ清宮の声だけが聞こえて、目を閉じれば清宮が目の前にいるようだった。
『今回は嘘じゃねぇんだ!もう一度、もう一度だけでいいから、信じてくれッ…!!』
とっくに信じてるんだがな。
怒っていない。とっくに信じている。だが、この生意気な後輩に惚れきっていることが悔しくてもう少しだけ意地悪してやろうと黙っていた。
『コウっ!』
だが、いよいよ本当に泣きそうに声を震わせるものだから、いじめすぎた気がした。
携帯の向こうの清宮は今頃どんな表情しているんだろう。きっと焦って、泣きそうで、苦しそうなんだと思う。俺のためにここまで余裕を失っているのだと思うと、とても気分がいい。
そろそろ安心させてやろうと口を開こうとしたところで、潮の香りに混じって香水の香りがした。
紅茶とシトラスとムスクの香り。誰の香水かなんて分かりきっていて、とても優しくて爽やかな香りに振り向いた途端、視界は黒く塗りつぶされて強くきつく抱きしめられていた。
そして、携帯越しじゃない本当の声で、
「コウ、…愛してるんだ…!」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。