14.
期待してもいいんだろうか。
信じてもいいんだろうか。
もう遅すぎるかもしれないとも思うが、デスクの上に置かれた合格証明書とメダルを見て無意識に緊張しだすあたり、俺はまだ諦めていないんだろう。
もう一度ぶつかってみたい。もう一度本気になってみたい。…いや、今思えば、俺は最初から今までずっと清宮に本気だったんだから、もう一度も何もないんだろう。
『…もしも、まだほんの一欠片でも相手の言葉を信じてみたい気持ちがあるのなら、』
蓮の言葉を思い出した。
(あぁ、そうだよ、)
信じたい。疑いたくない。
愛してるという言葉も、宝物に触れるかのような優しい手も、何度も振ってきたキスも、鼓動さえ共有していたような快感も、火傷しそうなほどの体温も、愛情を秘めた穏やかな目も、全て、全て、
(全身全霊で信じたいんだよ…!)
愛しい人が与えてくれたものを信じたい。
『心に従って行動すべきだと思います』
あれだけ信じることを恐れていたのに、進むことを諦めていたのに、いざ素直になってしまえばこれから何をすべきかよく分かる。
心が教えてくれる、とでも言うんだろうか。未来がどうなってほしいか、そのためには俺がどう動くべきか、はっきりと分かって心が叫ぶ。急げ、今度は俺が動く番だ、と。
(上等だ)
合格証明書とメダルを鞄に入れた。財布とか携帯とか必要なものも入れる。簡単に準備を整えて部屋を見回して、意を決して口を開いた。
「急用ができた。今夜は店に戻らないから」
合格証明書とメダルを鞄に入れた時点で、何をしに行くかなんて言わなくても伝わっているだろう。
尋斗は呆れたように笑って、蓮は安心して頬を緩めて、辻は少し緊張した顔をしていた。俺達の関係は立花も気付いていたらしく、いってらっしゃいッス、と手を振ってくれた。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。