11.
「清宮から何も聞いていないのか?」
運営本部から試験結果の通達が来た時から首を傾げていた。清宮にデータを奪われたはずなのに、受験者側が提出したデータはゼロだったのだ。
何度運営本部に問い合せてもこの結果で間違いはないと断言されたが、俺のUSBメモリーにデータを盗まれた跡が残っているから、絶対に俺の勘違いじゃないと言いきれる。
データが破損したのかとも思ったが、この様子なら清宮は奪ったデータを辻と立花にも教えなかったらしい。最後まで隠し通した。
そして、ついには提出しなかった。
「何かの間違いでは?」
「間違いじゃない。何度も確認した」
「聞いてませんよ?慧は、…ハニートラップは失敗して、外出すら断られて、データを奪うチャンスなんてなかった、と言ってて…」
「は?嘘だ。俺は清宮とドライブに出かけて、眠っている間にデータを奪われた」
辻の目が見るみる間に見開かれていく。
そんな…、と呟いた声には演技では片付けられない本物の驚きが滲んでいた。
「…そんなこと、一言も」
黙っていたどころか、清宮は仲間に嘘をついた。
辻と立花を蹴り落として自分だけ提出することもなく、まるで自分さえも最初から手に入れられなかったように最後まで嘘をつき通した。
データは破損していない。無傷だ。だって、破損したなら修復しようと試みるはずで、外出できなかった、奪えなかった、なんて嘘をつくはずがない。むしろ辻と立花に頼るべきだ。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。