9.
「…ところで、差出人不明のメールでAV女優を勧めてきたのって、どなたですか?」
成績評価を見た後にその話題になった。
成績評価には俺が早い段階で辻が受験者だと見破っていたことや、立花にわざとタバスコ入りを飲ませたことや、今後のアドバイスなどかなり詳しく書かれていて、二人は複雑そうに顔を顰めていた。
「あー、それはだなぁ…」
ちらっ、と蓮を見る。視線を逸らされた。
諦めずにじっと蓮を凝視していれば、全員が俺の視線を追って蓮を見る。しばらくは何事もなさそうに窓の外を眺めていた蓮だったが、ついには四人の視線に耐えきれなかったらしい。
だが、気不味そうにするかと思いきや、むしろ開きなおった清々しい笑みを見せた。そして、グッととても楽しそうに親指を立てた。
「可愛かったでしょう?」
「北谷先輩…、まぁ、そうですが、」
反応は様々だった。
微妙に絶句する辻。同志を見付けたかのようにキラキラと目を輝かせ、見えない尻尾を振っている立花。無言で不満そうにする尋斗に、好きな女優さんを褒められてご機嫌な蓮が鼻で笑っていた。
カオスになりつつある雰囲気に紛れて、さらっと爆弾発言をしてみることにした。前々から言いたかったが、言う機会が見付からなかった言葉だ。
「因みに、俺はお前と同じ女優さんが大好きだから、辻。美乳な年下清純派!」
「ぶ、ほはぁあ!!??」
「汚いッス、和泉!」
爆弾発言だとは分かっていた。だが、飲んでいた紅茶を噴き出すほどだとは思っていなかった。
立花の方に噴き出してくれてよかった、と内心ほっとしていると気管に入ったらしい辻がコホコホと咳こみながら涙目でプルプル震え始めた。
「…なんで、知ってるんですか?」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。