8.
「お前達の合格証明書とメダルだ」
それを渡すとまた嬉しそうにはしゃぐ。
「やったッス!!」
「ありがとうございます!」
まだ実感のなさそうな二人を微笑ましく見ていると、視線を感じた。 すぐ隣に座っていた尋斗は俺の手元に残った最後の合格証明書とメダルを一瞬だけ見ると、また視線を俺に戻した。
どうするの、と聞かれたのが分かった。
「辻、…清宮に渡しておいてくれ」
トン、とそれらをテーブルに置いた。
金曜日を待てば済む話かもしれないが、ハニートラップを仕掛ける必要がなくなってしまった今、もう来るかどうかも分からない。それに辻に任せた方が清宮に早く届くだろう。
だが、清宮の合格証明書とメダルを見下ろして、辻は申し訳なさそうに笑った。
「すみません、コウさん」
「秘書を辞めたのか?」
「いえ、秘書は続けるつもりですが、…このお手伝いはできませんので、ご自分で慧に渡してください。…ごめんなさい」
「どうしてだ?清宮はもうクラブに来ないかもしれないんだぞ?」
そこまで言えば、辻が笑った。
微笑ましそうな、それでいて仕方なさそうな笑みで訳が分からなくなった。
「いえ、それはありませんよ。…慧は、必ずあなたに会いに来ます。信じてください」
清宮に会いたくないのにそんな微笑みと共に言われてしまうと、それ以上辻に押し付けることもできなくて、結局しばらく俺が預かることになった。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。