7.
パン、と弾ける音がして、二人は反射的に目を閉じて体に力を入れるのが見えた。
だが、いつまでたっても訪れない痛みに、というより、本物よりもずっと軽い発砲音におそるおそる目を開けた途端、ひらひらと舞い降りる桜吹雪に二人の目が嬉しそうに輝く。
自然の光もなく、夜の室内の照明だったからそんなに綺麗じゃないだろうが、二人の目は本当に嬉しそうだったから俺まで嬉しくなった。
髪や服に桜吹雪が落ちた二人に微笑んで、事前に用意した台詞を三人で言った。
「試験合格おめでとう!」
ぱち、ぱち、と瞬きが繰り返される。
「…俺達、合格したんスか?全員?」
「本当ですか?データ奪えなかったのに?」
頷いてやれば、また嬉しそうにする。
その表情は本当に晴れ晴れとしていた。
「やったッス!慧にも報告するッスよ!」
「ありがとうございます、コウさぁあん!!」
立花が携帯を取り出して誰かにメールを打つ。早く教えたくてたまらないという表情から察するに、相手は清宮なんだろう。
そして、俺は辻に見えるように銃を回して遊んでいれば、俺が言いたいことが分かったらしく、辻が恥ずかしそうに軽く首筋を染めた。
実はこの銃は本物じゃない。あの時、お前はこの花が飛び出る楽しい銃で俺を脅していたんだ。そう言外に伝えたが、後輩の痛々しい黒歴史をそっとしてやろうとあえて言葉にはしなかった。俯いてプルプル震える辻は徐々に耳まで赤く染めた。
(やばい。楽しい)
だが、言葉にしない俺は優しいと思うんだ。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。