2.
もちろん、チームワークだけじゃない。
個人の能力も採点対象になる。戦闘、情報収集、演技、駆け引きなどなど対象は様々だ。そのことについても俺と蓮と尋斗の意見はだいたい一致した。
まず、榊、…本名を辻和泉。
俺は見破れなかったふりをしたが、最初から囮として潜入した辻は度胸がある。仲間のために自分が餌となって敵の注意を引き付ける点では、とても仲間思いで協力を惜しまないタイプだ。
もちろん、万が一窮地に陥った場合、危機を脱する戦闘能力も持っている。それは二度も直接戦った俺が一番よく知っているし、間近で見ていた尋斗も辻の強さを褒めていた。
さらに、洞察力と観察眼が鋭く、短時間で物事を正確に捉えることに長けている。
クラブにいると上手く偽ったことや、四人目に見せかけたライフルの狙撃など、頭の柔軟性と策略も充分だと思う。
そして、引き際の判断が正確だ。
狙撃の後、戦うことを諦めてクラブに戻ったのはスタッフが掃除し終える時間帯だったからであり、掃除し終えて手伝えなくなるとアリバイが崩れてしまう。感情と目先の事態に囚われず、常に全体の計画を考えて行動できる。
次に、立花志朗。
対人の駆け引きが上手い。俺は見破れたが、あのインディアン・ポーカーの手腕は悪くなかった。これからもっと成長していくだろう。
口の上手さと話をコントロールする話術は蓮も褒めていた。曰く、昨日の夜、何度も本気で話題を切ろうとしたのにまたいつの間にか話が盛り上がっていたし、話の流れが自然だった。
機械操作と情報収集も得意らしい。監視カメラの映像をすり替えたり、尋斗の情報を割り出したりしたのは大した実力だ。
そして、これは意外だったが、立花は変装の名手だ。クラブのスタッフに扮した時はあのスタッフが店の古株じゃなければ俺にも分からなかったし、貿易会社の社長に扮した時も立花かもしれないと推測するしかなかった。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。