合否発表
31日の日曜日を最後に試験は終了した。
スピードが命であるこの業界では試験の採点も大至急で行われる。二日後に合否発表で、俺は一日以内で三人の評価を終えなければならない。
三人の採点は補佐に任せず、全て試験監督が担当するから蓮と尋斗には意見を聞いただけで、俺が入力した。蓮と尋斗の意見は、健闘したから合格にしてもいい。その意見には俺も納得していた。
因みに、データを多く奪えれば点数は高いとも限らないし、データを全く奪えなかったからといって問答無用で不合格にするわけでもない。
この試験はそれ以外の態度にも注目している。
新式TCCEは今年で三年目。つまり、一昨年が一年目で、去年が二年目になる。
一年目はデータが一つも奪えなかったものの、全員合格。もともと三人のアマチュアが三人の先輩と戦うのには無理があると本部も分かっていたし、健闘したと判断されたから合格点をもらえた。
なら、どうして無理のある勝負にするのか。
それはプレッシャーへの弱さとチームワークを試すためだ。先輩が扮する強敵を相手にひよっこ達は一致団結して、信頼しあって戦わなければならない。
旧式もそうだった。試験で用意された三丁の銃、合計12発の銃弾は互いを殺すためのものではなく、最後のドアをぶち破るためのもの。一丁ではドアを破れないから三丁の力を合わせて脱出するんだ。
仲間を信用できるか。仲間と協力できるか。もちろん、技術面で大幅に足を引っ張ればアウトになるが、少々の失敗なら大目に見られる。
一年目は協力ができていたから合格。
だが、二年目は全員不合格だった。
一応協力して一つのデータを奪えたものの、今度はそのデータを巡って仲間割れ。三つ巴の内輪もめで、殺傷にまで発展してしまったらしい。
情報屋の本質は信頼のおける相手との情報の共有。仲間を信じず、むしろ蹴落とすような奴らに合格を渡すわけがない。三人とも命に別状はないものの、試験は中止で全員不合格になった。
つまり、合否は奪えたデータの数にはそんなに関係がないのだ。
そう信じ込ませることによって協力するか、蹴落とそうとするかが見分けやすくなるだけであり、最初から三つも奪えるとは期待していないんだ。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。