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ラストゲーム


来る、とどっしり構えて待ち受けていたのに、翌日の金曜日に清宮は来なかった。清宮が通い始めてからの一年で、初めて店に来ない金曜日だった。

俺にどこかで愛想を尽かせたんだろうか、だなんて考えるほど恋愛思考じゃない。むしろ、データを一つ奪えたから満足したんだろうか、と冷静に分析出来るほどには落ち着きを取り戻していた。

心がとても凪いでいる。

そうだ。もともと何も手に入っていないんだから、失うものもない。日常は何も変わっていないんだから、何かを悲しむ必要もなかった。

構えてはいたものの特に清宮を待つこともなく金曜日を終え、土曜日が過ぎて、日曜日の夜になった。31日、試験最後の日。試験が始まった最初の日はまだ穏やかな暑さだったのに、ここ最近は屋外なら何もしなくてもじわりと汗が滲む。

試験最後の日。俺が嘘をつく最後の日。

奴らが必ず何か仕掛けてくる日。

そして、清宮に会えないからズルズルと引きずった嘘の関係にピリオドが打たれる日。

今日会えるとは限らない。だが、俺は清宮にとってはただのターゲットでしかないんだから、試験終了と共に自然と恋人という関係は解消される。

試験終了は午前0時。奪ったデータをTCCE運営本部に送るタイムリミットは0時15分。

それを越しての提出は締め切りを守れなかったことにより採点の対象とならないため、きっと日付けを跨ぐ前に勝負を仕掛けてくるんだろう。

(おそらく、…強奪に来る)

気付かれずに情報を奪うのが情報屋として一番いいやり方だが、ここまで追い詰められてしまえば手段を選んでいる余裕なんて残っていない。

仕掛けてくるだろうことは蓮も尋斗も知っている。

だから、今、蓮は一階の警備室でのんびりとお茶を飲みながら待ち構えており、俺と尋斗は二階の部屋と中で繋がっている仮眠室で息を潜めていた。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。