2.
「で?決心はついたの?」
銃の用意を終えた後、暇になってクルクル回転させて遊びながら壁掛けの時計を見た。23時45分。いつ仕掛けられてもおかしくない時間だ。
狙われるなら二階に続くドアの開け閉めを管理する蓮が一番疲れそうな時刻、つまり、試験終了のギリギリ間際。今だ。
蓮を騙してドアを開かせようとするだろうが、嘘っぽい言葉を言われたらあまり遊ばずにドアを開けるように蓮に言ってある。因みに、ドアのロックが外されたら俺の手元にあるランプが赤く光る仕組みになっている。それが開始の合図だ。
だが、0時直前に来るとは予想はしていても完全な確信があるわけじゃなかったから、俺は今日は接客をせずにずっと二階にいた。
で、仮眠室で書類を処理しつつ、暇を持て余しつつ、待って待ち続けて今に至る。
「あいつのことなら犬に噛まれたと思っておく」
「ふーん?清宮格好いいのにィ?」
唐突に出てきた名前に銃を落としかけた。
「な、なんで清宮だって知ってるんだ、お前。教えたことなんか…!」
「だってェ、俺を誘った日のあんたの反応からして榊と立花じゃないしィ、清宮はあの有名なハニーだしィ?そりゃ分かるよォ」
「…そこは分からないふりをしろよ」
「てへ」
ペロ、と悪戯っぽく舌を出される。それに頭が痛くなりそうだった。うっかりに見せかけて、実は確信犯なんだからタチが悪い。
だが、この腐れ縁は付き合いが長すぎるから歯に衣着せぬ物言いをするばかりか、好奇心でキラキラと輝いている目で人の傷を抉ってくる。なのに、痛いと感じないあたり、鮮血が滴っていた傷はかさぶたになり、ついに古傷になったらしい。
この想いだって完全に昇華されている。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。