3.
「それに、誰に迫られようと尋斗の心の中には俺しかいないって分かってるんです。だから、嫉妬も不安も感じないんですよ」
羨ましいと思った。
こうも恋人を信じきれることが。
「俺の言葉が信じられないなら、今度イチャついて見せましょうか?それか惚気とか」
「信じる!信じる!信じるから!」
もうこのカップルの惚気には耐えられない。昔TCCEに合格した直後の尋斗からの自慢の電話も、暇さえあれば二人でイチャつくのも、飲み会の度に尋斗とのツーショットを見せてくる蓮にも、胸焼けで食欲がなくなるほど甘ったるくて敵わない。
付き合って三年というものの、倦怠期も迎えずに新婚夫婦の雰囲気を保ち続ける驚異のカップルだ。
それは信頼があるからこそだと思う。殺し合いのゲームに一緒に合格した二人は、きっと自らの命を相手に預けることすら躊躇いがないんだろう。
命を預けられるほどの信頼。
俺には遠くて無縁のものだった。
「で、悩んでいる年下の先輩に、特別にお兄さんからのアドバイスです」
「…悩んでないが、別に」
「素直に聞きなさい」
ぽんぽん、と頭を軽く叩かれた。まるで出来の悪い子供を励ますような動作に思わずじとりとした目を向ければ、優しい目と視線が絡まった。
「誰かを愛することは、その人を信じるということです。相手の言葉を信じられないのであれば、もはやそこに未来の可能性はありません」
「っ、」
「ですが、…もしも、まだほんの一欠片でも相手の言葉を信じてみたい気持ちがあるのなら、」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。