9.
「お前達は…、本当に優しいな」
涙を拭けば、榊と立花が黙った。
しばらく俺をじっと見て、榊が口を開く。
「コウさんからしたら頼りないように感じるかもしれませんが、…私達はあなたが思っている以上に強いのでもっと頼ってください」
「ッス!」
「ありがとう」
隣に座った二人の頭を撫でた。
本当に優しいやつらだ。
TCCEに合格して一流の情報屋になると、人間同士の繋がりを軽視するようになって利益と名声しか目に入らなくなる奴がいる。金のために良心すら売ってしまうような奴がいる。
こいつらなら大丈夫だろう。きっと良心を忘れずに、良識のある仕事をするだろう。
もちろん、清宮も。
あの時、俺を抱いていた清宮の目には罪悪感があった。俺をこんな方法で騙すことに良心が痛んでいたんだろう。ハニートラップだって立派な策略の一つだ。なのに、あいつは人の感情を弄ぶことに罪悪感を抱いていた。
情報屋に良心を求めるのは間違いかもしれない。その中途半端な優しさが、いつしか命取りになってしまうかもしれない。
だが、俺はこいつらには人としての心を忘れないでほしいと思うし、それに、
(立花も、榊も、…清宮も、優しさを貫けるほどの強さを持っているんだろう)
だから、心配はしていなかった。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。