3.
(高い酒だ。…サービスしてやるか)
ちゅ、と唇の端に吸いつく。
そのまま唇同士を軽く触れ合わせて啄んで薄く口を開けば、舌はすぐに潜り込んできた。
熱い舌を受け入れて、清宮の耳の後ろをくすぐってやる。くちゅ、と唾液が混じり合う音がして、ぬめる舌に追いかけられて絡め取られる。息を吐けば、その動きが激しくなった。
拘束してくる腕に力がこもって、逃げる気もなければ逃げ場もなかった。
唾液がどちらのものかも分からなくなって、吐息を混ぜて、激しくも余裕を隠したキスに呑まれたふりをして目を閉じる。
その時、足音が聞こえた。
(ん?)
カツカツ、カツカツ、と焦りを顕にした足音は、まっすぐこちらに向かってきたかと思うと俺と清宮のテーブルの前で止まった。
スタッフではないらしく、どういうことか不思議に思って目を開けると、そこにはきちんとスーツを着込んだ真面目そうな男がいた。
キスを見て真っ赤になっていたが、それでもあわあわと狼狽えたようにこちらを見る男は何か言いたそうで、俺は軽く清宮の胸を叩いてから押して離れさせた。清宮は不機嫌になっていたが。
「知ってる奴か?」
「…まぁな。俺の秘書だ」
「慧さん!!」
もうその人は泣きそうだった。
「なんだ。泣きそうになっているが、可愛い部下に無茶ぶりでもしたのか?」
「…いや、したつもりはねぇんだけど、」
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。