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2.


「お前も随分と物好きだな。女が放っておかないのに、いつもいつも俺のところに…」

「女よりもお前がいいんだよ」

ちゅ、と額に唇が降ってくる。

腰に腕が回されて、少ししか離れていない距離すらもどかしいとでも言いたいように、グッ、と引き寄せられる。バランスを崩したようにしてその太腿に手をついたのも、計算の内だ。

ふっ、と耳元で笑う気配がして、もう片方の腕も背中に回されて抱き締められた。

途端に強まる清宮の香水の香り。

深い紅茶の香りにシトラスの香りが混ざってとても爽やかで、なのに、控えめに存在を主張するムスクが甘くて、落ち着く。

抱き締める力に抵抗せず、むしろ自分から擦り寄っていく方がこの男は喜ぶ。女となら俺が可愛がる方だが、この男を相手にするのなら俺は可愛がられる方に徹した方がいいと既に分かっている。

甘えながら首筋に擦り寄って、清宮の耳たぶに息を吹きかけるようにしながら囁いた。

「好きだよ、慧」

直後、腕の力が強まった。

「まったく、こっちは商売だというのに、…本当にお前から目を離せなくなったらどうする?」

商売、なんて本来は言ってはいけない言葉だ。だが、キャストとしてではなく素で困っている感じを演出してやれば、あっけなく上機嫌になるだろう。

「そうなったら責任は取る」

「…どうやって?」

「お前が望めばなんだって与えてやるから、…いい加減俺のもんになっちまえば?」

「今、俺が何を欲しがっているのかも分からない人間の言葉を信じるほど甘くはないな」

「じゃあ、分かってるって言ったら?…シャトーのラフィット・ロートシルト、それとエノテーク・プラチナ、一本ずつ入れてやる」

ほら、ちょろい。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。