3.
前回キスをした後、尋斗は消毒がどうのこうのって言っていた。
あの時は尋斗とのキスが嫌で仕方がなかったのに、心から惚れさせられてまた騙されるくらいなら、最初から愛情なんてないと分かりきったキスの方が余程マシだと思えた。
尋斗とのキスを消毒だと思ってるわけじゃない。ただ清宮の体温を忘れたかった。あの唇の柔らかさを、火傷しそうな舌の熱さを、交わった吐息の感覚を消してしまいたかった。
一通り激しく貪ってから俺が唇を離す頃、二人とも息は絶え絶えになっていた。
「…コウ、マジでどうしたの?」
「尋斗、…俺を抱け」
尋斗の体が強張るのを感じた。
当たり前だろう。かつて一度も受け身をしたことも、しようとしたこともなかった俺が、演技の必要もない時に誘ったんだ。
最低、だと思う。昔からの仲間を、しかも、恋人がいると知っている仲間を誘うだなんて。
「っ、」
少しの時間でいいんだ。何も考えられないようにしてほしい。意図せずに清宮のことを考えてしまうこの思考を止めてほしい。体に刻みつけられた体温を上書きしてほしい。…それが出来るなら、別に誰だって構わなかった。
シャツのボタンを開けた時、俺が本気だと分かったんだろう。尋斗が息を呑んだ。
だが、また上半身を倒してキスをしようとした瞬間、いきなり視界が反転する。瞬きすら忘れてしまった目はいつの間にか天井を見上げていて、背中にはソファーの感触があった。
今度は俺が尋斗を見上げる番だった。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。