2.
「お疲れェー。ん?どった、コ、…っ!?」
一階の奥の個室に入って、ソファーに座った瞬間に思いっきり尋斗を押し倒した。
革張りのソファーに背中を預けながら、貫禄を出すようにオールバックにセットされた髪が僅かに乱れ、その目が見開かれていく。
俺とヤクザの繋がりをほのめかすために、尋斗にはまた変装をして店に来てもらったのだが、今回は立花がいないから演技も必要ない。当初の予定では、適当に談笑するつもりだった。
だが、この時の俺は、自分でも自覚があるほどに荒れていた。
それに、付き合いが長くて信用のおける仲間を前にして、気が緩んだのかもしれない。
「コウ?…どした?」
動揺して揺れている瞳には気がついていた。
だが、気づかなかったふりをして、問いかけすら無視して、尋斗の唇に噛み付いた。
ん、とくぐもった声がする。身動きを封じるように尋斗を跨ぎながら組み敷いて、両手首を強く押さえつければ目がさらに丸まっていく。
唇同士の触れ合いなんかじゃない。文句を言おうと尋斗が口を僅かに開いた瞬間、俺は舌を入れた。前回とは違う俺からのキス。いや、キスと呼ぶには激しすぎる貪るような接触だった。
舌を無理矢理奥まで入れて、嫌がって逃げる舌を強引に絡めて、少し強いくらいに吸って、息をする暇すら与えずに唇を重ねて、貪る。
抵抗する体を力で押さえつける。逃げようと頭が動くから、両手首を片手でまとめて拘束し、空いた手で尋斗の顔を固定した。
「やめ、ろ、…っ、コウ…!」
俺の体の下から動揺した声がする。
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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。